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「フリックは約束を破った!」ドイツは、日本戦惨敗→監督解任→フランス戦勝利をどう受け止めた?「新監督はナーゲルスマンが最有力だが…」
text by
中野吉之伴Kichinosuke Nakano
photograph byAFP=JIJI PRESS
posted2023/09/19 17:00
急きょ、フランス戦の指揮を執ることになったルディ・フェラー。2002年W杯で準優勝を成し遂げた“老将”の再登場にドイツ国内の反応は…
《激しい競り合い》《ハードワーク》《素早い攻守の切り替え》《コンパクトな陣形》。それぞれのタスクができるだけわかりやすく整理されたことで、選手の動きに鋭さが戻ったのは興味深い。
必要だったのは《わかりやすさ》なのでは?
選手たちにしても監督交代が意味することが分からないはずがないし、キャプテンのイルカイ・ギュンドアンをはじめ多くの選手が責任を感じていた。それこそ「眼の色を変えた」プレーを見せていく。自然とユニフォームを汚していく選手ばかりだった。
負傷欠場となったヨシュア・キミッヒに代わり、右SBで始めて起用された本職CBのヨナタン・ター(レバークーゼン)が、同サイドにしっかりとふたをして、相手の攻撃を跳ね返す。DFのすべき仕事はまず守備なのだ。当たり前のことを当たり前にしたことがチームの安定感向上につながったのは何より印象的な変化だった。もちろんフリックにしてもチームを立て直そうと様々なことを思案しただろうが、チームに必要だったのは《わかりやすさ》だったのかもしれない。
Eurosport“フェラーがドイツに目覚めのキス”
「チームは素晴らしくファイトしてくれた」とフェラーは喜んだ。メディアも久しぶりの喜ばしい結果にノリノリで記事をアップしていった。
Sportschau「シンプルなコンセプトで大きな成果!」
Sport1「フェラーがフランスを驚かした」
Eurosport「フェラーがドイツに目覚めのキスをした」
フランクフルター・アルゲマイネ紙「フェラー効果がドイツ代表を生き生きとさせた」
ツァイト紙「ファンは偉大なフェラーのカムバックに歓喜した」
スタジアムに駆け付けたファンも一緒に雰囲気を作り出した。8万人収容のドルトムントのスタジアムは満員にはならなかった。それでも6万人以上が詰めかけ、代表戦でファンとチームがここまで一体感を見せてくれた試合はほとんどなかったと思わせられるほどの盛り上がりが生まれていた。
もちろんフランス代表に勝利したことで、ドイツ代表が抱えていた問題すべてが解決したわけではない。新監督探しは急務だ。確かなフェラー効果がみられたことで、様々なメディアが「欧州選手権までフェラー監督で!」という声も大きい。ファンからのアンケート結果も、フェラー支持者が圧倒的に多いのだ。
ナーゲルスマン、ファン・ハール、そしてあの人も…
ただフェラーはフランスに勝利した後も、あくまでもこの試合だけの暫定的な措置という姿勢を崩さなかった。フェラーはフランス戦の翌日にブンデスリーガ60周年式典に参加する予定だったが、「この数日間は非常に大変でストレスの多い日々だったので、少しの休みを取ることにした」と欠席した。どれだけのプレッシャーを抱えてフランスに臨んだことか。