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<甲子園決勝対談>森林貴彦(慶応)×須江航(仙台育英)「丸田君の打席で慶応の応援歌、歌ってましたよ」「大村君の人柄、好きになりました」
text by
田口元義Genki Taguchi
photograph byHideki Sugiyama
posted2023/09/14 11:02
左から慶応義塾・森林貴彦監督、仙台育英・須江航監督
――両校は決勝で戦う以前から、練習試合などで交流があるようですね。
森林 仙台育英の前監督さんの時から、定期的に練習試合をさせていただいています。昨年と今年も、県大会前の最後の試合をうちの大学のグラウンドを借りてやりました。
須江 慶応さんとは今年のセンバツでも戦って(延長10回に仙台育英がサヨナラで勝利)、7月の練習試合(仙台育英が4対2で勝利)でもお互いの成長を感じられましたし、森林さんと「1カ月後に甲子園で対戦したらどうなりますかね?」と話していたら、まさか決勝で当たるなんて。
――慶応義塾は選手の主体性を重視するなど、「エンジョイ・ベースボール」を掲げており、仙台育英は試合でのデータやSNSを活用しながら選手と綿密なコミュニケーションを図っています。お互いのチームをどうご覧になられていますか。
森林 チームとしてまとまりがありながら、選手一人ひとりの表情が画一的ではないんですよね。私は練習試合で相手チームの選手によく話しかけるんですが、育英さんの選手は話していて楽しい。ちゃんと会話ができるので、普段から自分の意見が言える環境なんだろうなと。戦力もすごいですし、あのレベルで野球がやれたらそれは楽しいと思います。だからと言って「勝つことだけを目標として戦っていないんだな」と感じさせてくれる、素敵なチームです。
須江 僕はセンバツの抽選会でキャプテンの大村(昊澄)君と話して、その人柄が好きになりました。思考力の高い集団は、キャプテンを誰にするかで色が変わると思うんです。試合をしていても、大村君がキャプテンだからこういうチームになるんだなと感じました。「エンジョイ・ベースボール」の下地には日々の目標設定をクリアするための根性があって、慶応さんの試合を見ていても、苦しい展開になっても歯を食いしばって乗り越えていきます。うわべだけの「エンジョイ」じゃなくて、本当に強いチームの野球だと感じます。
選手の意見を集約して、監督が代表してサインを出す
――おふたりの野球観の共通点として「野球はセットプレーの連続だ」という考え方があります。1球単位でプレーが止まる野球では、どうしても選手が監督のサインに依存してしまう傾向があると。おふたりとも、選手が指示待ちになってしまうことを危惧されていると思います。サインについては、どのように考えていますか?