月刊スポーツ新聞時評BACK NUMBER
自由な髪型も話題を呼んだが…甲子園「スポーツ紙報道」に考える“高校野球らしさ”の罠「矛盾があるから盛り上がる。論争も起きやすい」
text by
プチ鹿島Petit Kashima
photograph byJIJI PRESS
posted2023/09/01 17:01
夏の甲子園は慶應高校の優勝で幕を閉じた
「自由な髪型」も話題を集めたが…
自主性の中には「自由な髪形」、「丸刈り」というキーワードも入ってくる。サンケイスポーツで作家の高橋源一郎氏は次のように書いていた(8月20日)。
《高校野球といえば「丸刈り」だった。誰でも思うことだろうが「なんで?」だ。「丸刈り」が野球をするのにいいなら、大学でも社会人でもプロでもやるはずだ。なのにもっぱら「高校野球」のみが「丸刈り」。理由は分かっている。「理由はない」である。分かりにくいかもしれないが「決まっていることだから守れ」である。》
ああ……さらに、
《要するに軍隊だ。「高校野球」をやるということは「入隊」するということだった。そのための形式が「丸刈り」だったのである。》
高橋氏は「始めたものはやめられない」のは前の戦争もそうだったねえ、と書く。
ちなみにこの文章は競馬予想コラムの前半の文章である。このような論や考察はもっとスポーツ紙の最初のほうにたくさんあってもよいのでは。
「高校野球は慶応の優勝で変わる?」という問いも
慶応の自主性や多様性のおかげでひとまずホッとしている人も多いと思うが、ズケズケと書くのが売りのタブロイド紙にはこんな記事があった。
『慶応優勝 怨嗟の声』(日刊ゲンダイ8月25日)
高校野球は慶応の優勝で変わるか? という問いにアマチュア野球に詳しいライターの方が、
・ほぼ全員がエスカレーターで慶大に進学できる慶応の選手と野球学校の選手とでは、置かれた境遇が違い過ぎる
・少子化の今、どこの私学も経営は苦しい。野球学校は野球の結果で名前を売るしかない
・野球学校は今後、以前にも増して選手をかき集めるだろうし、さらに選手を練習漬けにして慶応を倒そうとするでしょう
・慶応の森林監督が高校野球の古い体質に一石を投じたのは確かだけど、野球学校はむしろ慶応とは逆の方向へ進んでいくと思います
以上のように指摘していた。全国の野球学校が黙っちゃいない、という見出しが躍り「野球学校の逆襲が始まる」と結ばれている。
高校野球は今後も論争が付いて回るジャンルな気がします。以上、8月のスポーツ新聞時評でした。