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なぜ崖っぷちでも「比江島タイム」が発動できた?…殊勲のヒーローが語った「0勝10敗、“悔しさ”の歴史」《バスケW杯ベネズエラ戦》
posted2023/09/01 17:03
text by
ミムラユウスケYusuke Mimura
photograph by
FIBA
「うちがリードしている時間はたったの4分24秒。本当に今日はしんどい試合で……」
渡邊雄太がそう振り返るのも当然だった。
W杯4試合目となるベネズエラ戦。立ち上がりこそリードを奪った日本だったが、第1クォーター(Q)の残り5分28秒に逆転を許してからは、ずっと相手を追いかける展開となる。1Qから3Qまで、全てのQでベネズエラの方が多く点をとっていた。
「37~38分は相手のペースだったと思うんです。なかなか自分たちのバスケットが出せずに、みんなちょっとイライラしていた状態が続いていたというか」
渡邊が反省の弁を述べたように、日本は本来の力を発揮できずにいた。これまでの試合ならファールをとってもらえていたような場面で、審判の笛が鳴らないことにフラストレーションをためている選手もいた。
なかなか実力を発揮できなかった日本チーム
そもそも、ベネズエラは日本と同じように3Pシュートを武器にしているチームだ(1次リーグでの成功率は35.1%)。インサイドがそれほど強いわけではない。にもかかわらず3Q終了時点までインサイドを支配していたのは彼らだった。
ベネズエラの2Pシュートの成功率は1次リーグでは平均わずか49%だったはずが、この試合の3Q終了時では59%。リバウンドの数も同時点で平均30本のチームであるベネズエラに、40本も取られていた。それに対して、日本の2Pシュートの平均成功率は1次リーグでの61.5%から大幅に下がって、この試合では3Q終了時点でわずか36%に終わっていた。
過去3試合では後半になると一気にギアを上げていた日本だったが、この日は3Qの終盤からも相手に流れを持っていかれた。最終第4Q残り8分12秒の時点では、この試合最大となる15点差をつけられてしまっていた。
「後半に強い」という日本の神話は崩れかけ、崖っぷちに立たされていた。
しかし——。