核心にシュートを!BACK NUMBER
なぜ崖っぷちでも「比江島タイム」が発動できた?…殊勲のヒーローが語った「0勝10敗、“悔しさ”の歴史」《バスケW杯ベネズエラ戦》
text by
ミムラユウスケYusuke Mimura
photograph byFIBA
posted2023/09/01 17:03
ベネズエラ戦でチーム最多の23得点を挙げた比江島慎。33歳のベテランが秘めた想いは…?
「一人ひとりが良い仕事をしたと思っているんですけど、ディフェンスでは河村、オフェンスではマコ(比江島)が自分たちを引っ張ってくれました」
渡邊がそう語るように、守備では172cmと小柄なポイントガード(PG)の河村勇輝が最前線から敵のPGに強烈なプレッシャーをかけ、相手の攻撃のリズムを狂わせた。これによって、ベネズエラがインサイドに思うようにボールを入れられなくなった。
攻撃では、チーム最年長33歳の「比江島慎ショー」が始まった。第4Q残り7分19秒の場面で決めた3Pシュートを皮切りに、そこから一人で17点もたたき出し、86-77という奇跡の逆転劇を演じてみせた。
大会の日本の最大の目標は、アジア1位のチームに与えられるパリ五輪出場権の獲得だ。この日の勝利で9月2日のカーボベルデとの最終戦に勝てば、パリへの切符を無条件で手にできることになった。
この試合最大となる15点差をつけられた上述の場面を、殊勲の比江島はこう振り返る。
「絶対に相手の足は止まってくると思っていましたし、絶対に相手の3Pも落ちてくると思っていたので。そんなに“慌てることなく”やれたと思います」
崖っぷちでも「比江島タイム」が発動できたワケ
なぜ比江島は極限まで追い込まれた状況にもかかわらず“慌てることなく”プレーを続けられたのだろうか?
1つ目の理由は、この日の彼のシュートタッチだ。バスケは繊細なスポーツであり、日々の微妙な感覚の変化によってアウトサイドのシュート確率は大きく左右される。3Pを40%決められれば名選手と言われるが、そんな選手でも20%の成功率に終わる日もあれば、60%決められる日もあるのがバスケというスポーツの持つ面白さの一面でもある。比江島は言う。
「(この試合では)ホント、シュートの感触が良かったので。『打ち切りさえすれば、入る!』という感覚がありました」
そして、比江島が慌てなかった理由がもう1つあった。