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慶応の応援“まとめる重要人物”に直撃「なぜあんなに声揃う?」…あの音圧を生む応援団「決められたルールない」「吹奏楽部OBもすべて男性」
posted2023/08/23 11:02
text by
梅津有希子Yukiko Umetsu
photograph by
Yukiko Umetsu
慶応高のアルプススタンドを埋め尽くす、卒業生や慶応関係者、一般のファン、そして学校の大応援団。大会期間中、注目を浴び続けてきた大人数と大声援による応援は、凄まじいまでの“圧”と熱量で、あふれんばかりの母校愛をひしひしと感じさせる。
重要人物に直撃…モットーは「考える応援」
『ダッシュケイオウ』『突撃のテーマ』『シリウス』など、六大学野球の応援でおなじみのメロディが慶応高アルプスからも流れてくるが、何といっても圧巻なのは、繰り返し何度も流れる『若き血』だろう。慶応大を代表するカレッジソングで、「校歌は歌えなくても、『若き血』は歌える」という学生や卒業生は多く、アルプスで肩を組んで何度も歌う姿に、慶応の固い絆を感じたという人も多いのではないだろうか。
仙台育英との決勝戦を前に、慶応高吹奏楽部出身で、「應援総合コーチ」を務める土橋祐太氏に、今回のアルプス応援について話を聞いた。現在慶応大経済学部3年の土橋氏は、2018年、高校1年の時に出場した春夏の甲子園で応援経験がある。当時は「自分のことで精一杯だった」というが、今回は吹奏楽部とチア、応援指導部をまとめる総合コーチという立場でアルプスに立つ。森林貴彦監督率いる野球部は、文武両道をうたい、髪型自由、長時間練習なしなどの「考える野球」というフレーズが広く知られているが、アルプスは「考える応援」をモットーに活動しているという。
なぜあれほど声揃う?
「私は応援全体をまとめるコーチという立場ですが、前例や慣習にとらわれすぎず、現役部員には今できるベストを考え続けさせることを意識しています。試合中は、応援指導部と吹奏楽部の応援を取りまとめる生徒が、曲決めからお客さんへの働きかけ方などを自分たちで考えるので、『この選手の打席ではこの曲を演奏する』といったルールはありません。たとえば、応援席の反応が足りなければ、『もっとメガホンを大きく動かせる曲を入れよう』『もっと選手名を頻発させる曲で後押ししよう』などと自分たちで考え、応援席全体を盛り上げるといった具合です」(土橋氏)