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“髪型自由”慶応との縁も…70年以上前に「非・丸刈り」で甲子園を制したチームの知られざる物語「野球技術と髪の長さは関係ありません」

posted2023/08/23 06:02

 
“髪型自由”慶応との縁も…70年以上前に「非・丸刈り」で甲子園を制したチームの知られざる物語「野球技術と髪の長さは関係ありません」<Number Web> photograph by Hideki Sugiyama

「非・丸刈り対決」となった準決勝で土浦日大に勝利し、思い思いのヘアスタイルで校歌を斉唱する慶応の選手たち

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安藤嘉浩

安藤嘉浩Yoshihiro Ando

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Hideki Sugiyama

 今夏の甲子園で、頭髪を伸ばした球児の姿が話題となっている。ベスト8進出校のうち、花巻東(岩手)、土浦日大(茨城)、慶応(神奈川)の3校は、丸刈りではなかった。「令和になって高校野球もついに変わったか」という声も聞かれるが、実は70年以上も前に丸刈りでない頭髪スタイルで勝ち上がったチームがあった。

全加盟校アンケートでは「長髪可」が5年前の4倍に

 第105回全国高等学校野球選手権記念大会に出場した49代表校のうち、クラーク国際(北北海道)、浜松開誠館(静岡)、立命館宇治(京都)、英明(香川)も丸刈りではなかった。先の3校と合わせて49校分の7校だから、割合は約14%。「まだ8割以上は丸刈りなのか」という声もある。

 一方で、帽子やヘルメットを脱ぐと前髪がさらりとたれる高校球児の姿は、確かに新鮮で新たな時代の到来を感じさせた。

 選手権大会の主催者である日本高等学校野球連盟と朝日新聞社は、記念大会がある5年ごとに全加盟校アンケートを実施している。

「部員の頭髪の扱いは野球部ではどのように取り決めていますか」

 第75回記念大会の1993年(平成5年)にスタートした時から設けている質問だ。

 今回は「丸刈り」26.4%(5年前は79.4%)、「スポーツ刈りも可」14.0%(同8.9%)、「特に取り決めず、長髪も可」59.3%(同14.2%)という結果だった。5年前と比べて、丸刈り派が3分の1に激減し、長髪も可というチームが4倍になっている。

あの松坂大輔も「スポーツ刈り」にしていた時期が…

 ぼくも朝日新聞に勤務していたので、この調査に毎回のように関わっていた。

 実は初めて調査した1993年は51%だった「丸刈り」は、5年後の1998年には31%に減っている。今年(2023年)と比べても5ポイントほどしか違わない。

 1998年と聞いて、ピンときた高校野球ファンも多いだろう。「平成の怪物」こと松坂大輔さんを擁する横浜高校(神奈川)が春夏連覇を達成した年になる。

 実は松坂さんも、長髪とは言わないまでも、スポーツ刈りにしていた時期があった。第70回記念選抜大会で優勝した後、渡辺元智監督が選手の希望を受け入れて許可したのだ。

 ただ、6月の招待試合で試合内容が悪かったため、監督に雷を落とされた。松坂さんは渡辺監督から「お前が率先して短くしなさい」と告げられてしまう。

【次ページ】 1949年、監督の“丸刈り指令”に反発した湘南の選手たち

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