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「6試合783球」を投げ抜いた島袋洋奨と「229球目に押し出し」の宮城大弥…興南高校“琉球サウスポーが繋ぐもの” 

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石田雄太

石田雄太Yuta Ishida

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photograph byAtsushi Hashimoto

posted2023/08/12 17:00

「6試合783球」を投げ抜いた島袋洋奨と「229球目に押し出し」の宮城大弥…興南高校“琉球サウスポーが繋ぐもの”<Number Web> photograph by Atsushi Hashimoto

「あの夏」の絆を紡ぐ島袋洋奨(左)と宮城大弥

 宮城が言った「今年のエース」――それが興南の3年生、生盛(せいもり)亜勇太だ。この夏の準決勝、未来沖縄との試合で生盛は大ピンチを凌いでいる。4-4の同点で迎えた9回裏、ヒットとツーベースで背負ったノーアウト二、三塁のピンチで3者連続三振を奪ったのだ。左バッターのインコースを抉り、アウトコースいっぱいに投げ切る。右の親指が攣って変化球が投げられなかったこともあり、3人のバッターに投げた18球はすべてまっすぐ。このピッチングを宮城はインターネット配信を通じて、リアルタイムで観ていたのだという。

「あれこそ、僕が目指していてできなかったピッチングでした。技術、闘争心に加えて破壊力があれば守りからぶち壊すことができる。洋奨さんもそう。バッターに圧倒的な差を感じさせながら、最後まで一人で投げ切った。それこそが興南のエースだと感じます。僕は負けましたけど、あれは絶対に成長につながる1試合でした」

ノーアウト満塁のピンチにリリーフ登板

 宮城も2年の夏、甲子園での土浦日大戦でノーアウト満塁の大ピンチにリリーフで登板、インコースへストレートを投げ込んでゼロに抑えたことがあった。島袋も2年の夏、沖縄大会の決勝でノーアウト満塁の場面からマウンドに上がり、中部商の4番を打っていた山川穂高を相手にストレートを投げ続け、8球目に見逃し三振を奪った経験を持つ。今年はベンチで生盛のピッチングを見守っていた島袋は、こう言った。

「生盛はずっと準備をしてきたからこそ、あの場所であのまっすぐを投げることができる……絶対に誰にもマウンドを譲らないという強い気持ちを感じました。周りの人には『ああいう場面で三振を取るのはお前以来だな』と言ってもらいました(笑)」

 延長の末に準決勝を勝ち上がった興南は、決勝で沖縄尚学を破り4年ぶりの甲子園出場を決めた。生盛は背番号1をつけて、初めて憧れの舞台に立つ。

「どんな状況でもマウンドに立っていられるのが興南のエースです。自分もこの夏、自分が出したランナーを残したまま代わりたくなかった。だから(我喜屋優)監督さんに『行かせて下さい』と言って、最後まで投げ切ることができました。興南のエースナンバーは重いし、重圧も責任もあります。だからこそ1番をつけて甲子園で堂々と投げてきたい。監督さんになってからの興南はずっと左がエースで、右は自分が初めてだと聞きました。興南の右のエースとして、全国に名前を轟かせたいですね」

【次ページ】 「ウチには左しか寄ってこない(笑)」

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