酒の肴に野球の記録BACK NUMBER
《マツコの知らない世界で話題》なぜ西武本拠地は“クラフトビールとスタグル改革”したか…「食でも楽しめるスタジアムを目指したい」
text by
広尾晃Kou Hiroo
photograph byTadashi Hosoda
posted2023/08/07 17:03
マツコの知らない世界で取り上げられ、話題沸騰のベルーナドームの飲食。そのエッセンスを荒木浩基営業部長に聞いた
この球場はクラフトビールの種類も、フードメニューもすごくバラエティに富んでいて、正直、「野球を見ないでも、食べ物だけで1日過ごすことができるな」と思いました〉
こうした視察を経て、荒木部長の方針は固まった。
〈もちろん、野球を一番に見ていただきたいのですが、それ以外でも楽しんでいただきたい。それまでもグルメには力を入れていましたが、それをさらに推進していきたいと思いました〉
「食でも楽しめるスタジアム」という構想
2017年から始まった球場の大改装のタイミングで、ビールやフードをさらに充実させる構想を加速させた。
〈クラフトビールで、ブルームーンに続いて2017年に入れたのが、ニューヨークで売り上げナンバーワンの『ブルックリンラガー』、そして2020年にはキリンビールの『タップ・マルシェ』、2023年には英国ナンバーワンの売り上げであるクラフトビールメーカーの『ブリュードッグ』のオフィシャルバーを、世界のスタジアムで初めて作りました。ブリュードッグの日本1号店は六本木の交差点近くにありますが、2号店がベルーナドームになりました〉
ベルーナドームに行けば、新たなビールの魅力を発見できる、これはビール好きならずとも大きな魅力になった。それだけではなく、今回の改修によって、コンコースには英国風パブの「HUB」や「MLB cafe SAITAMA」、さらには提灯が並ぶ居酒屋「球兵衛」など、ドリンクがメインの店も立ち並ぶようになった。
〈これまでお客様はお店が提供している1種類の銘柄のビールを飲むしかなかったのですが、今は、売店で様々な銘柄のビールをご自身で選べるように工夫を凝らしました。街で居酒屋さんに行っても国内のビールの銘柄が一斉に並んでいて、そこから選べるなんて、あまり見たことがないのではないでしょうか〉
簡単な話のようだが、長い付き合いのあるビールメーカー、酒造会社との調整は一筋縄ではいかなかった。しかし荒木部長は「食でも楽しめるスタジアム」を推進するために、いわば蛮勇を振るったわけだ。
〈2016年に海外クラフトビールを導入した時に分かりましたが、特定のメーカーや銘柄に絞り込むのではなく『市場を開放する』ことで、全体の売り上げも上がるんですね。ビール全体が盛り上がって、野球とビールの相性もますますよくなってきたんですね〉
ブリュードッグのビールを飲んでみると…
客単価や購買動向からは「市場開放」した効果には手ごたえを感じていると言う。