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《マツコの知らない世界で話題》なぜ西武本拠地は“クラフトビールとスタグル改革”したか…「食でも楽しめるスタジアムを目指したい」 

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広尾晃

広尾晃Kou Hiroo

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photograph byTadashi Hosoda

posted2023/08/07 17:03

《マツコの知らない世界で話題》なぜ西武本拠地は“クラフトビールとスタグル改革”したか…「食でも楽しめるスタジアムを目指したい」<Number Web> photograph by Tadashi Hosoda

マツコの知らない世界で取り上げられ、話題沸騰のベルーナドームの飲食。そのエッセンスを荒木浩基営業部長に聞いた

〈元々球場は座席で飲食することが当たり前でしたが、お客様同士が座席ではなくコンコースなどでも過ごせるようなエリアを2016年くらいから作り始めていました。指定席はありますが、席以外でも楽しめる空間を提供したい、それと同時に野球観戦におけるビールの魅力を広めたいとも思いました。2015年くらいまで当社を含めた12球場は国内の主要ビールを中心に販売していました。お客様もそれに慣れていたのだと感じています。

 海外ビールを導入するのは、相当難しかったです。販売目線で言っても「値段が高いし味になじみがないから売れないのではないか」という声もありましたが、私は野球場で新しいスタイルのビールを楽しむ文化を広めたいと思っていました。

 そこで『ブルームーン』というビールをいち早く導入しました。当時、アメリカの売り上げナンバーワンのクラフトビールで、しかもMLBコロラドロッキーズ本拠地球場の地下の醸造所で生まれた野球との親和性の高いビールで、フルーティなホワイトエールのビールでした。

20~30代、女性を見据えたクラフトビール導入

 他球場では、イベント催事などでクラフトビールをスポット的に売ることはあったと思いますが、1年を通してクラフトビールを生ビールで販売したのは当社が初めてだと思います〉

 新しいことをすれば、各方面から異論が出る。荒木部長は、それを承知でクラフトビール導入に踏み切った。

〈当時、国内のビールの市場は右肩下がりでした。それを打開したいとの思いもありました。それに新しいビールを入れることで、従来のビールの売り上げが下がるとも思っていませんでした。ブルームーンは結構フルーティなビールなのですが、これまでビールにあまりなじみがなかった20代、30代の若い方々や女性にも支持していただけると思ったからです。

 味の嗜好は年齢とともに変わっていきます。ブルームーンから入ったお客様が国内のビールに移っていく傾向もみられました。既存のビールの売り上げも上がりましたし、その上にブルームーンの売り上げも乗り、相乗効果が見られました〉

パドレス本拠地で感銘を受けた“食の衝撃”とは

 荒木部長はここからさらにMLBのボールパークを意識したマーケティングを展開する。

〈2017年から何度かアメリカに視察に行って、様々なスタジアムを見ました。その中で、フードに力を入れている球場もありました。

 2009年に開場した新ヤンキースタジアムを視察した際に先方のスタッフが、『いかに球場でご飯を食べてもらうか』を意識していると話していたのが印象に残っています。

 以前の球場では、ヤンキースファンはマンハッタンで食事をしてからブロンクス(ヤンキースタジアムの所在地)で野球を見る観戦スタイルで、お客様は試合開始ぎりぎりに来て、観戦していたそうです。でも、新しい球場ではフードのバリエーションも充実させて、サイネージ(映像、画像表示)で食欲をそそるような演出をして、マンハッタンじゃなく、ここで食事をしてもらうようにした、と語っていました。

 私がさらに感銘を受けたのは、サンディエゴ・パドレスの本拠地のペトコ・パークです。

【次ページ】 「食でも楽しめるスタジアム」という構想

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