酒の肴に野球の記録BACK NUMBER
「ビールの売り子さん」の知らない世界…「女性のお客様を大事に」「タンクを背負って20回は上り下り」“殿堂入り”菜々さんのプロ意識がスゴい
posted2023/08/07 17:04
text by
広尾晃Kou Hiroo
photograph by
Tadashi Hosoda
西武ライオンズのグルメ戦略、とりわけビール販売のマーケティングは、これまでの枠組みにとらわれない画期的なものだった。しかしながらベルーナドームのビール売り上げの大部分を占めるのは依然として「ビールの売り子」によるものだ。
筆者はベルーナドームのビールの売り子はきびきびして、機転も利いてレベルが高いなと思っていたのだが、その一人である菜々さんにインタビューすることができた。
初出勤の時に、ビールの注ぎ方を教えてもらって…
菜々さんは、ビールの売り子歴7年、高校を卒業してすぐにこの仕事に就いた。
〈西武線沿線に住んでいるわけではないんですが、西武が好きで、当時の西武ドームでビールを売ろうと思って自分で応募したんです。面接を受けて、志望動機などを聞かれましたが、そのあとすぐにお仕事の説明がありました〉
一般的に球場内の売り子は、ソフトドリンクから入って、チューハイ、サワーなどの飲料、そしてビールとなる。ビール販売は飲料販売の主力ではあるが、お客との対応も難しいし、ビール基地と客席間の移動もあって体力もいる。はじめは別の飲料から入って、適性を見計らってビールに抜擢するというのが一般的だ。
しかし菜々さんは最初からビールだった。プロ野球選手でいえば、さしずめ即戦力のドラフト1位だったのだろうか? そんな疑問を聞いてみると、菜々さんは当時をこう回想する。
〈初出勤の時に、ビールの注ぎ方を教えてもらって、そのまま販売に出ました。初対面のお客様に接客するときは“はじめまして感”は出さないようにしています。お客様にはとにかくフレンドリーで、あまり丁寧過ぎず、気さくに、というのが基本ですね〉
ビールって1日、どれくらい売れるの?
スタジアム内でのビールの販売方式は、球場によって異なる。