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千代の富士の長男が語る「筋肉美、肉体美」 SNSで“バズった”大横綱の家族が伝えたい思い「千代の富士を忘れないでいてもらいたいんです」
text by
雨宮圭吾Keigo Amemiya
photograph byTakuya Sugiyama
posted2023/07/28 11:02
「ちゃんこ千代の富士」の運営にも携わる長男の秋元剛さん。千代の富士の絵とともに
料理長は千代の富士の弟弟子
同店で料理長を務めるのは、千代の富士の年齢よりひとつ歳上だが、弟弟子であった佐藤善光さん。同じ釜の飯を食べ、千代の富士が若い頃に食べたちゃんこの味を知る一人だ。力士としては早くに引退したものの、千代の富士が部屋を興した際に部屋のマネージャーとなり、大横綱が愛した味を受け継いできた。
もうひとり、江戸川区春江にある『秀寿司』の大将も調理場を手伝っている。この店は千代の富士の現役時代の九重部屋のすぐ近くにあり、大横綱が「俺のこの筋肉は秀寿司でできているんだ」と豪語していたほど足繁く通った店だった。
「入門したての頃に、秀寿司のご夫婦にすごくお世話になったみたいなんです。僕ら子どもたちももちろんかわいがってもらってきました。家族で外食という時には秀寿司さんへ行くことも多かったです。そこの秀さんが働いてくれていて、父にゆかりのある人たちが作るちゃんこ。本当の意味で千代の富士が好きだった味を、千代の富士ゆかりの場所で食べられる。そこを皆さん喜んでくださっているんだと思います」
現代に生き続ける「千代の富士の魅力」
こうした種々の取り組みを通じて秋元さんが実感するのは、『千代の富士』という力士が持つブランド力、そして間口の広さだ。
「例えば『千代の富士の写真を使ってTシャツを作ろう』となっても、なんか変だよねとならないんですよね。不思議とみんながいいねと言ってくれるかっこいいものに仕上がる。その受け皿の大きさをコラボレーションを通じて感じています」
昨年のTwitterでの盛り上がりもそうだった。「カッコイイと思って思わず保存したけど、なんて言う名前の力士なんですかね? 無知ですみません」という写真付きの投稿に対し、梢さんが「うちの父です」と返信したことをきっかけに、令和の時代に昭和の大横綱がクローズアップされた。
「バズったのは単純にビジュアル力だと思います(笑)。千代の富士ってどんな力士だったんだろうって検索した時に、記録的にもすごい横綱だったとか、妹が世界的に活躍しているとか、いろいろなフックはあると思うのですが、とにかく存在がシンプルにカッコよくて、筋肉美や肉体美がある。このビジュアルの時代に“映え”られる、唯一無二の存在だと思います」
だからこそ人々を惹きつける。強い横綱・千代の富士は現代にも生き続けている。
記事内で紹介できなかった写真が多数ございます。こちらよりぜひご覧ください。