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〈116億円をFIFAが当初要求か〉「なでしこジャパンTV中継」ようやく開幕直前に…欧州、ブラジルも共通「女子W杯の正当な金額」という課題
posted2023/07/22 11:03
text by
沢田啓明Hiroaki Sawada
photograph by
Masashi Hara/Getty Images
今月13日、日本サッカー協会が「20日に開幕する女子ワールドカップ(W杯)オーストラリア・ニュージーランド大会のテレビ放送に関してFIFAとNHKが合意した」と発表した。
翌14日、NHKは具体的な放送予定を発表。20日の開幕戦(ニュージーランド対ノルウェー)、グループステージ(GS)の日本代表の3試合(22日ザンビア戦、26日コスタリカ戦、31日スペイン戦)、日本代表が決勝トーナメントに進出した場合のすべての試合と8月20日の決勝を主としてBS1(31日のスペイン戦だけNHK総合)で生中継するという。さらにFIFAは自身のデジタルプラットフォーム「FIFA+」で全試合とそのハイライト映像を日本語の実況、解説付きで配信すると発表した。
開幕まで1カ月を切ってもテレビ中継が決まらなかった6月21日、WEリーグ(日本女子プロサッカーリーグ)の髙田春奈チェアは「テレビ中継実現のため、クラウドファンディングのような形を模索したい」とまで語った。辛うじて、そのような非常事態は避けられた。
カタールW杯予選でも三笘が決めた豪州戦などが…
似たような状況は2021~22年にもあった。男子W杯カタール大会のアジア最終予選で、日本のテレビ局は日本代表のアウェイゲームの放映権を買い取ることができなかった。地上波での中継はなく、定額制動画配信サービスのDAZNが中継したが、有料であることから多くのライト層ファンが不満を唱えた。実際、三笘薫の2ゴールでW杯出場を決めたアウェイのオーストラリア戦も、地上波中継がなかった。
W杯カタール大会でも、日本のテレビ局はFIFAが放映権料として求めた350億円(推定)を払うのに四苦八苦した。最終的に、ABEMA(インターネット・テレビ)が総額の約57%に相当する200億円を負担し、NHKが80億円、テレビ朝日とフジテレビが70億円を負担することで解決。全64試合中41試合が地上波で中継された(ABEMAは全試合を無料でライブ配信)。
そして、今回の女子W杯である。この大会を取り巻く状況を、簡単に説明しておこう。
素朴な疑問:なぜ今大会から放映権料がアップした?
近年、欧米では女子フットボールの人気が急激に高まっている。
2019年の女子W杯フランス大会は1試合平均で約2万2000人の観衆を集め、準決勝2試合で合計10万人以上、決勝のアメリカ対オランダ戦では約5万8000人の観衆がスタンドを埋めた。今年の女子欧州チャンピオンリーグも大盛況で、準決勝のバルセロナとチェルシーの対戦では、ホーム・アンド・アウェーの2試合合計で約10万人の観衆を集めた。