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〈116億円をFIFAが当初要求か〉「なでしこジャパンTV中継」ようやく開幕直前に…欧州、ブラジルも共通「女子W杯の正当な金額」という課題
text by
沢田啓明Hiroaki Sawada
photograph byMasashi Hara/Getty Images
posted2023/07/22 11:03
パナマ戦後、2011年W杯キャプテンの澤穂希さんと笑顔を見せる熊谷紗希。「なでしこジャパン」の戦いをTVで見られるのは一安心だが……
過去8回の女子W杯で、FIFAはテレビ放映権を男子W杯の放映権と抱き合わせで販売してきた。しかし、近年の欧米における女子フットボールの人気上昇を背景に、今年の女子W杯のテレビ放映権を初めて単独に販売することを決断。ジェンダー平等への世界的な潮流も考慮し、大会の賞金総額を2019年大会の3.67倍となる1億1000万ドル(約170億円)へ大幅に増額した(これは2022年の男子W杯賞金総額の1/4。このことから、当面、FIFAは女子W杯の価値を男子W杯の1/4程度とみなしていると推測できる)。
この賞金を支払うためにも、テレビ放映権料の大幅増収を目指したのである。
FIFA会長「提示された額は男子の“1~5%”程度」
ただし、世界の女子フットボールの盟主であるアメリカとその隣国カナダ(2020年東京五輪で優勝)には、すでに2026年までの男子W杯大会と抱き合わせで今年の女子W杯の放映権を販売していた。それゆえFIFAは欧州主要国と日本から可能な限りのテレビ放映権料を取り立てることを目論んだ。
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ところが、欧州主要国のテレビ局との交渉で支払い希望額を提示されたFIFAのジャンニ・インファンティーノ会長は、強い不満を表明。「女子W杯の視聴率は、男子の50~60%に達する。にもかかわらず、欧州から提示された金額は男子の1/20から1/100程度でしかなかった」と憤った。「我々は女子フットボールの価値に見合う適正な金額の支払いを求める。そのことが、女子フットボールの地位向上にもつながる」と息まいた。今年5月には、「このままでは欧州の人々は女子W杯を一切、テレビで視聴できなくなる」と“脅迫”した。
欧州放送連合(EBU)とFIFAは交渉を重ね、6月14日に合意した。金額は公表されていないが、EBUは女子W杯中継の“付帯条件”として、少なくとも毎週1時間、女子フットボールに関する番組を放送することを提案。これによって、FIFAから一定の譲歩を引き出すことに成功した模様だ。
こうして、主要国のうちテレビ中継が決まっていないのは日本だけとなった。
日本のテレビ局に対し、FIFAは昨年の男子W杯のテレビ放映権料の約1/3に相当する116億円を求めたとされる。しかし、これは日本のテレビ局が簡単に支払える金額ではない。NHKがFIFAと交渉を繰り返した結果、開幕1週間前、ようやくFIFAとの合意にこぎつけた。
FIFAとの交渉が難航した“2つの理由”
今回、FIFAと日本のテレビ局の交渉がこれほどまでに難航した端的な理由は、以下の2つではないか。