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「オオタニは才能豊か」不調だった大谷翔平を指揮官が“それでもホメた”納得の理由…ダルビッシュとネビン監督が語った「大谷のスゴさ」の共通点
text by
笹田幸嗣Koji Sasada
photograph byGetty Images
posted2023/07/07 17:22
パドレスとの3連戦では10打数無安打と苦しんだ大谷翔平。ダルビッシュとネビン監督の言葉から、今後の“可能性”を探る
打者・大谷へのアプローチはどのチームの投手に聞いても具体的なことは明かさない。分析班が綿密に作り上げたスカウティング・リポートは企業秘密だ。もちろん、ダルビッシュもそれは同様。だが、彼は打者大谷の凄みについて興味深い話をしてくれた。
「日本人的だなって、すごく思いますね、僕は」
日本人的なアプローチとは、なんなのか。ダルビッシュは続けた。
「アプローチの仕方も、ずっと同じところを攻められたら、スイングを変えるとか」
ダルビッシュとネビン監督の“大谷評”に共通するもの
6月。大谷が好調期を迎えると相手投手陣の攻め方が変わった。5月の不調期は徹底的にパワーボールを高めに集め、外角の低めへ変化球を落とす。考える配球というより弱点を徹底的に突いた。だが、大谷が好調期を迎えるとその配球では大谷を抑えられなくなった。バッテリーは内外角、高低、緩急、あらゆる球種を駆使し、大谷に球種を絞らせない配球へと変わっていった。ダルビッシュはその部分を少し具体的に教えてくれた。その上で大谷の凄みを語った。
「狙い球をすごく決めて打ってくる。決め打ちというか、全体的に待っているというより、この打席はこれを待つ、このカウントではこれを打つとか、決めている感じがする。頭を使っているなと思います」
打者は、自分が仕留められてきたボールを仕留め返すことで、投手との優位性を逆転させようとする。それが一流の投手と打者との対峙だ。大谷は、自分が苦しめられてきた攻め方を分析し、研究し、技術的なアジャストをはかる。今の大谷はこの領域で結果を残している。
実際にこんなことがあった。6月29日のホワイトソックス戦。大谷は救援投手として実績のある右腕グレブマンの外角低めの難しいスライダーを中堅左へ438フィート(約133.5メートル)の特大29号本塁打を放った。カウント1−2からのウイニングショットを仕留めた打撃にフィル・ネビン監督は唸っていた。
「1カ月くらい前だろうか。彼は悩んでいた。だが、彼はそこから投手の彼に対する攻め、外角低めへの難しいボールへの対処の仕方を勉強し、理解した。彼は、今、その球を逆方向へ運んでいる。才能豊かで実に見ていて楽しい」
今回のダルビッシュの指摘は、言葉は違えども本質的には同じことだと感じた。