酒の肴に野球の記録BACK NUMBER
「オオタニを敵チームもアツく報道」「6月27戦15発+5登板中3戦で自援護HR」マンガを軽く超える大谷翔平〈87.6の新武器〉ってナニ?
text by
広尾晃Kou Hiroo
photograph byNanae Suzuki
posted2023/07/02 17:02
マンガ設定すら軽く超える大谷翔平。その猛打を支える「87.6」の数字に着目してみた
打線では大谷の相棒のマイク・トラウトが17本塁打42打点、打率.263と例年に比べてやや不調なうえに、2020年から7年2.45億ドルの大型契約をした内野手アンソニー・レンドンがIL(負傷者リスト)入りするなど、負傷者続出が痛い。投手陣では今季レンジャーズから移籍し、セットアッパーとして期待がかかったマット・ムーア(元ソフトバンク)がIL入りし、救援陣がやや弱いのが大きい。
アメリカの報道でも対戦チームの公式サイトが…
大谷が大活躍したのに、エンゼルスが負ける試合を「なおエ」と表現する。「大谷選手大活躍、なおエンゼルスは負けました」ということだが、6月、大谷が本塁打を打った試合では、エンゼルスが勝ったのが7試合「なおエ」が6試合だった。
月間本塁打のMLB記録は、ナ・リーグが1998年6月にカブスのサミー・ソーサが記録した20本塁打、ア・リーグが1937年8月にタイガースのルディ・ヨークが記録した18本塁打だ。
ただ6月のア・リーグに限定すると、大谷翔平は1930年ヤンキースのベーブ・ルース、1934年フィラデルフィア・アスレチックスのボブ・ジョンソン、1961年ヤンキースのロジャー・マリスが記録した15本塁打に並んだことになる。大谷の成績を調べるとよく出てくるが――またルースの名前が出てきた。
最近、アメリカの報道で気づくのは、エンゼルスの対戦チームの公式サイトが対戦相手であるはずの「Shohei Ohtani」について報じることが多くなったことだ。「大谷、飛距離140mの大ホームラン」「大谷10奪三振」、要するに敵地の野球ファンでさえも「ショウヘイ・オオタニ」から目が離せなくなっているようだ。さらにTwitterなどでも「今日は自分たちのチームがエンゼルスを破ったし、大谷翔平もホームランを打ったし、最高だった」といったコメントが散見されるようになった。
MLBの公式サイトにも大谷翔平がトップ画面に掲示されている日が本当に多くなった。大谷は数いる「MLBのスター選手」の1人ではなく、トップスターになったと表現して過言ではない。オールスターのファン投票で、ア・リーグでただ1人「二次投票」を経ずに選出が決まったのもむべなるかな、と思う。
大谷の新たな武器は「去年より2.54cm長いバット」
しかし筆者の立場としては、ビールはうまいが――「大谷凄い」ばっかり言っていても仕方がない。「今季の大谷翔平は、何が凄いのか?」について踏み込まなければいけないわけだ。ついつい「だって、大谷翔平なんだから」と言ってしまいそうになるが、考察したくなる要素の1つが「バットの長さ」である。