酒の肴に野球の記録BACK NUMBER
「オオタニを敵チームもアツく報道」「6月27戦15発+5登板中3戦で自援護HR」マンガを軽く超える大谷翔平〈87.6の新武器〉ってナニ?
text by
広尾晃Kou Hiroo
photograph byNanae Suzuki
posted2023/07/02 17:02
マンガ設定すら軽く超える大谷翔平。その猛打を支える「87.6」の数字に着目してみた
今季の大谷翔平は、昨年よりも1インチ(2.54cm)長い34.5インチ(87.6cm)のバットを使用している。メーカーもアシックスから米のチャンドラーにスイッチした。ちなみにチャンドラーは2021年からNPBでも使用することができるようになり、ヤンキースのアーロン・ジャッジが使っていることでも知られる。
一流のスラッガーがバットの長さを1インチも長くするのは、異例のことだとされる。バットの感触、感覚が変わってしまえば、打撃フォームや投球への反応も違ってしまうからだ。しかし、大谷は新しい「武器」をいとも簡単に使いこなして、前年を上回る成績を上げている。
WBCのトラックマン責任者に聞いた“大谷ウラ話”
筆者は先日「トラックマン」野球部門責任者の星川太輔さんを当コラムにて紹介したが、名古屋の壮行試合から合流した大谷は、星川さんに「打撃練習のデータを計測してほしい」と依頼している。筆者はこれを何気なく聞いていたが、実は大谷は今季から使う新しいバットのデータを知りたかったのだ。
大谷はWBC前の2月26日、27日にMLBのオープン戦に出ている。そこでも新しいバットを使って三塁打を打っているが、本格的な実戦での使用はWBCが初めてだったはずだ。だから、長いバットでの打球速度がどれくらいなのか、以前より遅くなっていないかを気にしていたという。
大谷がBP(打撃練習)でバットをものすごい勢いでフルスイングしていたのも、バンテリンドームの上段席に打球を放り込んでいたのも――大谷にとっては“バットの感触をテストする”意識だったのではないか。
3月6日、京セラドームでの阪神との強化試合、大谷は3回、阪神の才木浩人からバランスを崩して膝をついた姿勢でバックスクリーンに大ホームランを叩きこんだ。続く5回の打席でも冨田蓮から中堅にホームランを打った。
日本のファンは度肝を抜かれたが、大谷自身も〈チャンドラーのこのバット、使えるわー〉と思ったのではないか。何せ今まで届かなかったところのボールまで打ち抜くことができるのだから。
新しいバットのポイントは「重さ」もある
新しいバットのポイントは「重さ」だろう。