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「誤算があった」藤井聡太20歳が“王座19期連続獲得”羽生善治52歳を「刀折れ矢尽きる」状態に…大名人・大山康晴のような「受けつぶし」 

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田丸昇

田丸昇Noboru Tamaru

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posted2023/06/29 17:05

「誤算があった」藤井聡太20歳が“王座19期連続獲得”羽生善治52歳を「刀折れ矢尽きる」状態に…大名人・大山康晴のような「受けつぶし」<Number Web> photograph by JIJI PRESS

王座戦挑戦者決定トーナメント準決勝で対局した藤井聡太竜王・名人と羽生善治九段

 藤井は以後の王座戦挑戦者決定トーナメントで、1回戦で3回も敗退した。2019年は佐々木大地五段(3勝3敗)、2021年は深浦九段(1勝3敗)、2022年は大橋貴洸六段(2勝4敗)だった。いずれの対戦相手にも互角か負け越している(※カッコ内は藤井から見た6月末日時点の対戦成績)。

 つまり藤井にとって、王座戦は「鬼門」となっていた。今期は準々決勝で村田顕弘六段に逆転勝ちし、準決勝に5年ぶりに進出した。

渡辺明19歳相手に「指が震えた」羽生の王座死守

 一方の羽生九段は、王座戦で抜群の実績を挙げている。通算99期のタイトルのうち最多の24期を獲得し、名誉王座の永世称号を取得している。

 1992年(平成4)に羽生棋王は福崎文吾王座を3連勝で破り、王座のタイトルを初めて獲得した。その後、羽生王座は2010年にかけて、王座を19期連続で獲得していた。これは同一のタイトル獲得数、連続獲得数で歴代1位の記録だ。

 挑戦者の顔ぶれは、谷川浩司王将(1993年)、丸山忠久八段(99年)、藤井猛竜王(2000年)、佐藤康光棋聖・王将(02年)、森内俊之竜王・名人(04年)、久保利明八段(07年)、木村一基八段(08年)など。その時々のタイトル保持者や若手精鋭を下してきた。

 羽生王座は計19期のタイトル戦の対局で、通算成績は57勝10敗(8割5分)。2004年から2010年にかけては19連勝した。

 このように無敵だった羽生だが――2003年の王座戦では、挑戦者の渡辺明五段(当時19)に1勝2敗でカド番に追い込まれた。第4局と第5局に勝って王座を死守したが、第5局の終盤で羽生の指が震えて駒をしっかり持てない光景が初めて見られた。近年の羽生の指の震えは勝利のサインといわれるが、20年前は本当の緊張感だったようだ。

 羽生は2011年に渡辺竜王に敗れて王座を失冠したが、翌年に渡辺王座を破って復位し、2016年まで5連覇した。2017年に王座を失って以降は王座戦で目立った実績はなかった。今期は千田翔太七段、佐藤康光九段、久保九段らに勝ち、準決勝に4年ぶりに進出した。

「藤井-羽生」はタイトル戦さながらの盛り上がり

 王座戦準決勝、藤井竜王・名人と羽生九段の対局は、6月28日に東京の将棋会館で行われた。両者の対戦成績は藤井の11勝3敗だが、一番勝負ではデータはあまり関係ない。

 振り駒によって藤井の先手番と決まり、戦型は角換わりとなった。羽生は銀を中段に進め、後手番ながら先攻した。藤井は柔らかい受けで対応した。

【次ページ】 藤井いわく「誤算があって苦しかった」

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