プロテスト合格が「就活に役立った」という声も

　八王子中屋ジムのチャンピオンメーカー、中屋廣隆チーフトレーナーは「うちの場合、落ちることはまずないです。それは受かる選手しか受けさせないから。でも大事なのはテストじゃなくて、プロの試合で勝っていくこと。テストで終わりじゃないですから」とあくまでデビューしてからの試合を見据えて指導している。世界を目指すウェルター級WBOアジアパシフィック王者、佐々木尽を擁する本格派ジムらしい方針だ。どのようなジムもこのような方針なら、合格率は100％に近づくことだろう。

　一方で、プロテストにはこんな事情もある。プロテストとは本来、プロのリングで試合をするための登竜門のはずだが、プロボクサーになる意思がないのにプロテストに挑む受験生が少なからずいる。選手になるつもりはないけれど、プロテストを受験し、合格してボクサーライセンスを手にしたいという人たちだ。福地レフェリーの感触だと、テスト合格者の3分の1くらいがこのようなケースに当てはまる。

那須川天心とも親交が深く、格闘技好きとして知られる横浜流星さん（2016年撮影）　©Shigeki Yamamoto

　テストだけ合格してプロにならない。実際にリングでファイトする選手の中には、このような“ボクサー”を好ましく思わない人もいるかもしれない。ただし、これはこれでその人のレベル、目標設定の問題と考えることはできないだろうか。34歳を目前にして「せめてプロテストだけでも」という練習生もいる。前出の真部会長は次のように話す。

「私は目標がプロテストであってもいいと思っています。下地のない人にとっては決して簡単なハードルじゃない。目標があればモチベーションになるし、プロのライセンス取得がその人の自信につながるなら、それも意味があることです。テスト合格が就活に役立った、という話は何度か聞きました。『プロのボクサーライセンスを取りました』と言うと、面接官の受けがすごくいいと。もちろん就活に役立つからプロテストを目指しましょう、という話ではないんですけど、プロテストにはそういういろいろな側面があるということです」

　プロテストに合格すると尊敬の対象になり得る。そういう現実が少なからずあるのだろう。それは、ボクシングというスポーツが長い年月をかけて積み上げてきた信頼が、プロテストのステータスを高めている、ということの証左でもある。だからこそ、毎年多くの人たちがプロテストを受験し、人気俳優のC級テスト合格も価値あるニュースとして報じられるのだ。

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