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一瞬でモロニーが大の字に…“衝撃KOで2階級制覇”中谷潤人がラスベガスで手にしたもの「多くの選手がナカタニとの対戦を避けてきた」
posted2023/05/23 17:36
text by
渋谷淳Jun Shibuya
photograph by
EPA/JIJI PRESS
WBO世界スーパーフライ級王座決定戦が5月20日(日本時間21日)、米ラスベガスのMGMグランド・ガーデン・アリーナで行われ、同級1位の中谷潤人(M.T)が同級2位のアンドリュー・モロニー(オーストラリア)に最終12回2分42秒KO勝ち、2階級制覇を達成した。“ネクスト・モンスター”と呼ばれる中谷がラスベガスに残した足跡、そして今後の展望を見ていきたい。
モロニーが一瞬で大の字に…衝撃KOの瞬間
判定決着にはなってしまったけど、2度ダウンを奪って大差判定勝ちは立派――。
そう思った矢先の一撃だったからインパクトは倍増した。試合終了まで残り30秒。最後の最後まであきらめないモロニーが前に出た瞬間だった。腰を落とした中谷が右に頭を沈め、頭と対角線上のポジションから左拳を振り抜く。鋭利な弧を描くパンチをまともに食らったモロニーは一瞬にしてキャンバスに大の字だ。マーク・ネルソン主審が素早く両手を交差させた。
この先、SNSやプロモーションビデオで繰り返し再生されるであろう衝撃的なノックアウト。「ずっと練習してきたパンチだったのでスムーズに出た」との言葉を裏付けるように、スローで確認すると、中谷がしっかりモロニーを目でとらえ、完璧なタイミングでカウンターを打ち込んでいることがよく分かる。
「いい形で倒せたことは、すごく高い点数をあげていいんじゃないかなと思います」
普段は控えめな中谷が興奮気味に自画自賛するほど見事なフィニッシュだった。
中谷にとって初めて経験するラスベガスのリングだった。中学生のときにプロボクサーを志し、高校へは進まずにアメリカに渡ってボクシングを学んだ。以来、日本とアメリカを行き来してトレーニングを積み、17歳でプロデビューした。
そのころからラスベガスはあこがれの地であり、数々の名勝負が繰り広げられたMGMグランド・ガーデン・アリーナは華やかな舞台の象徴だった。今回のメインはデビン・ヘイニー(米)とワシル・ロマチェンコ(ウクライナ)による注目のライト級4団体統一戦。中谷は「大きな舞台でいいパフォーマンスをすることが僕のモチベーション」と気持ちを大いに高めていた。