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横浜流星が合格した「ボクシングのプロテスト」はどれくらい難しい? 関係者が語る実情「1年は練習が必要」「就活に役立ったという声も」
text by
渋谷淳Jun Shibuya
photograph byGetty Images
posted2023/06/23 17:12
人気俳優が合格したボクシングのプロテストとは、いったいどんな内容なのか。難易度や合格者の「その後」について、関係者に話を聞いた
C級の合格率は7割超、しかし「1年は練習が必要」
プロテストの内容は、筆記試験、計量、ドクターチェック、実技試験(2ラウンドのスパーリング)の4つ。スパーリングではJBCがテスト用に特注した通常よりも柔らかい14オンス・グローブを使用する(試合ではスーパーライト級以下が8オンス、ウェルター級以上が10オンスを使う)。受験料は1万1000円だ。
筆記試験は反則や急所を問い、実技試験ではパンチがしっかり打てるか、反則をしないか、ディフェンスができるか、4回戦を戦うスタミナがあるか――などなど基本的な項目をチェックする。スパーリングは勝ち負けを競わない。たとえダウンしても基本ができていれば合格だ。福地レフェリーは「たとえばクリーンヒットをもらったら、同じパンチをもらわないことが大事。ようは考えてやっているか。そういうところを見ます」と説明する。
押さえておきたいのは、このテストが「落とすためのテストではない」ということだ。つまりは一定のレベルさえクリアしていれば合格できる。また、何度落ちても受験し直すことができるため、「なぜ落ちたかを聞かれたら、必ず答えられるようにしています」と福地レフェリー。ぜひ再トライして合格してほしい、というメッセージである。
どれくらいの人が合格するのかというと、2023年上半期(1~6月)の男子C級受験者は265人、合格者は207人で合格率は78.1%。2022年の男子C級は受験者590人、合格者448人で合格率76%。この合格率を高いと見るか、低いと見るかは考え方によって変わってくるだろう。ちなみにB級受験者は22年で29人。合格率は100%だ。
では、プロテストとはいったいどれくらい難しいものなのか。マナベジムの真部豊会長は、「どれくらい練習したらプロになれるでしょう?」と質問してくる人に対して、「1年くらいは必要ですね」と答えている。
「まったく経験がなければ1年くらいは継続して練習しないとダメでしょう。もちろんキックボクシングとか空手の経験がある人はもっと早いし、野球でもサッカーでも、スポーツ経験があるか、下地があるかないかで変わってきます」(真部会長)
ちなみに横浜さんは空手の経験があり、しかも中学生時代に空手の国際大会で優勝した経験を持つというから、下地は十分すぎるほどあった。
福地レフェリーは以前、実技試験であまりにひどい選手がいたので、スパーリングを途中で止めたことがある。「キミ、どれくらい練習したの?」と聞いたら「3カ月です」と答えが返ってきて、あとでその選手が所属するジムの会長に「もう少し練習させてください」と注意したとか。合格させて、試合をさせて、事故が起きてしまってからでは遅い。こうならないためにも、しっかり準備してからテストを受けることが望ましいだろう。