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今季の大谷翔平は何が違う? パワーだけではない、進化した“読み”の正確性「今年の大谷はセオリーを逆手にとって、狙い澄ましている」 

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四竈衛

四竈衛Mamoru Shikama

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photograph byNanae Suzuki

posted2023/06/19 11:03

今季の大谷翔平は何が違う? パワーだけではない、進化した“読み”の正確性「今年の大谷はセオリーを逆手にとって、狙い澄ましている」<Number Web> photograph by Nanae Suzuki

レンジャーズとの4連戦から本塁打量産体制に入りつつある大谷。本塁打王を争った2021年よりもハイペースで“仕留めている”要因を探った

「ヤマ張り」ではなく、「読み」。

 似て非なる2つのアプローチには、実は雲泥の差がある。さほど根拠がなく、「一か八か」のリスクを承知で待つ「ヤマ張り」に対し、過去のデータや幾多の経験に基づき、より可能性の高い選択をするのが「読み」。今季の大谷には、「読み」「絞り球」の正確性が、これまで以上に高まったことにより、快打につながっているケースも少なくない。

「ボールの見え方も良かったですし、結果も良かったと思います」

 大谷自身が、試合後に快打の経緯や裏側を明かすことはない。

 ただ、内角球を左中間へ運んだ19号は、初球に際どいコースを「ストライク」と判定された直後の2球目。同じコースを攻めてくるとの確信にも近い「読み」で、特大弾につなげた。

 6月10日のマリナーズ戦では、ブライアン・ウーの内角低めへのスライダーを空振りした直後、ほぼ同じコースのスライダーを右翼席へ運んだ。「ヤマ張り」ではなく、極めて高い確率を見込んだ、的確な「読み」の結果だった。

“セオリー無視”、常識外れの20号目

 全球団が細かいデータを持ち、入念な対策を施す時代。通常、打者は相手投手の持ち球の特徴などを事前にインプットして試合に臨む。ただ、投手として打者対策を繰り返してきた大谷の場合、打席に立つ際、相手投手の心理状態、バッテリーの配球傾向など、敵の意図をかぎ分ける能力をも兼ね備える。「二刀流」の利点を最大限に利用できるのも、大谷の強みと言っていい。

 たとえば、1点を争う緊迫した試合の終盤、無死二塁の状況で、右方向への進塁打を打たせないように外角を攻めるのであれば、無理に引っ張るのではなく、そのまま、左翼スタンドまで飛ばしてしまえばいい。

 実際、12日の第6打席では、タイブレークの延長12回無死二塁の場面で、初球の真ん中高めのカットボールをインサイドからかち上げ、左翼へ勝ち越しの20号2ランをたたきこんだ。

【次ページ】 パワーだけではない、心身両面での「進化」

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