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今季の大谷翔平は何が違う? パワーだけではない、進化した“読み”の正確性「今年の大谷はセオリーを逆手にとって、狙い澄ましている」
posted2023/06/19 11:03
text by
四竈衛Mamoru Shikama
photograph by
Nanae Suzuki
試合の行方を左右する豪快なアーチをかけると、今季のエンゼルス大谷翔平は、自軍ベンチへ向け、左手を突き上げ、沸き立つ感情を隠そうとしない。その一方、負け試合で「焼け石に水」の一打を放ったとしても、ニコリとも笑わない。WBCで見せた激情ほどではなくとも、試合が緊迫し、アドレナリンが出るような展開になれば、大谷はためらうことなく熱い胸の内をさらけ出す。より豊かになった感情表現は、内面の「変化」の一端ではないだろうか。
昨季の本塁打王を置き去りに
その象徴的な一戦が、6月12日。敵地アーリントンで行われたレンジャーズ戦だった。
4-5と1点を追う7回、左中間二階席へ飛び込む同点の19号ソロを放った。さらに、延長12回には、左翼越えの勝ち越し20号2ランをたたき込み、昨季MVPのアーロン・ジャッジ外野手(ヤンキース)を抜き去り、本塁打王争いの単独トップに躍り出た。ダイヤモンドを1周する際には、雄叫びを挙げつつ、ベースを蹴った。だが、試合後の大谷は、個の結果以上に、チームの勝利に目を向けた。
「打っているシチュエーションも良かったので、なおさら嬉しいかなと思いますし、初戦が大事だと思うので、中継ぎもみんな頑張っていましたし、守備も良かったので、何とか勝てて良かったなと思います」
地区首位を走るライバル相手の4連戦第1ラウンドでもあり、劣勢を跳ね返し、勝利を手繰り寄せた2発の価値を素直に受け止めた。
メジャー6年目を迎えた大谷が、一段とパワーアップした姿は、WBC東京ラウンドなど日本のファンの前でも披露した。ただ、パワーだけで結果が残せるほど甘い世界ではない。
空振りした球をホームランにする「読み」の正確性
大谷の今季の充実度の裏に、打撃技術だけでなく「読み」の正確性があるのも見逃せない。