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羽生善治新会長「忙しい方が…」二刀流でタイトル100期なるか? 元A級棋士が知る“七冠後の羽生”に米長邦雄55歳が感心した日とは
text by
田丸昇Noboru Tamaru
photograph byJIJI PRESS
posted2023/06/14 17:00
日本将棋連盟の会長に選任され、記者会見する羽生善治九段
2015年・今泉健司「41歳の最年長四段です。経験はその分だけあるので、将棋の普及に努めたい」
2016年・井出隼平(田丸の弟子)「振り飛車で勝っていきたい」
2018年・長谷部浩平「升田幸三の直系の弟子なので、新手一生で生きていきたい」
2019年・山本博志「普及に熱心な師匠(小倉久史)を見習いたい」
2020年・服部慎一郎「変幻自在の指し回しで忍者と呼ばれたい」
同年・谷合廣紀「大学(東大)で学んできた情報工学を生かしたい」
2017年の連盟総会では、藤井聡太新四段(当時14)は欠席した。師匠の杉本昌隆七段(当時)が「まだまだ未熟者ですが、強い棋士になれるように努力します」という藤井の挨拶を代読した。なお、藤井は未成年やコロナ禍という事情もあって、総会にはずっと欠席だった。今年も出席しなかった。
「伝統を、次の世代につないでいけるように」
過去の総会では重要な議案によって、紛糾する事態になったこともあった。
今年の総会は議事が順調に進行した。連盟創立100周年に当たる2024年に東西の将棋会館を新しく建設、棋戦契約金などの増収による安定した運営、「藤井人気」の好影響を受けた普及の成果と、明るい展望が開かれていた。
懸案の会館建設の資金面について、A級棋士の中村太地八段(35)がCF=クラウドファンディングの推進を訴えた。若い世代の棋士が中心になって取り組んでいるのは頼もしかった。
議案がすべて終了し、退任する佐藤会長が閉会の辞を述べると、棋士たちは3期6年にわたる業務をねぎらって拍手で称えた。佐藤九段は今後、会館建設委員会の副会長として、谷川浩司十七世名人(61)、森内俊之九段(52)らと尽力していくという。
日本将棋連盟の新会長は、全理事の互選によって羽生九段が就任した。
羽生会長は総会後の記者会見で、次のように抱負を語った。
「私自身が将棋界や将棋連盟に貢献できるか、ずっと考えていました。佐藤会長の退任もあって、3月に理事への立候補を決意しました。諸先輩の方々が紡いできた伝統を、次の世代につないでいけるように、力を尽くす所存です。東西の将棋会館の建設、各地の自治体と連携して地方創生、子どもたちへの普及、などに取り組んでいきます。棋士との両立は、実際に業務を行ってみないと分かりませんが、自分自身でやり切れたらいいと思います」
七冠獲得後の羽生が米長を感心させた日とは
羽生が将棋界の第一人者になっていた1990年代には、師匠の二上達也九段が連盟会長として運営を取り仕切っていた。弟子の羽生は運営について、発言したり行動することは立場的に控えていたようだ。