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MLB強打者に聞くメッツ千賀滉大の“お化けフォーク”はなぜ打てない?「フォークはもちろん素晴らしい球だが…」「1年目のタナカと似てる」
text by
杉浦大介Daisuke Sugiura
photograph byGetty Images
posted2023/06/02 17:03
お化けグッズが発売されるなど、ニューヨークの注目度が高まっているメッツ千賀滉大
「千賀は田中将大に似ているね。デトロイト・タイガースに属していた2014年、ヤンキースに来たばかりの田中とも対戦した。日本の投手たちはゆっくりとした投球フォームから鋭い速球を投げてくる。いいスプリットを持っているという点で、田中と千賀は共通している。田中も1年目は94〜97マイルの速球を投げていたけど、千賀の真っ直ぐはもっと球威があるんじゃないかな……」
田中のヤンキースでの7年間に及ぶキャリアを間近で見た筆者も、実はメジャー1年目の田中と千賀の相似点は少なくないと考えていた。
適応が難しい東海岸を選ぶ大胆さも
田中が2014年に渡米した際、“地球上最高のスプリット”を持っていると喧伝され、一方の千賀も“お化けフォーク”が代名詞的になっている。千賀と比べて本格派の印象は薄れた田中だが、1年目途中に右肘を痛めるまでは確かに状況に応じて90マイル代後半の真っ直ぐも投げ込んでいた。
千賀の勝負度胸、生活面でより適応が難しいとされるアメリカ東海岸を選んだ大胆さ、さらには意思の強そうな顔つきもニューヨークの先輩を彷彿とさせる。細かい制球力では田中が、速球の球速と球威ではカステラノスの言葉通りに千賀が上回っており、もちろんまったく同じタイプの投手ではないとしても、確かに共通点は少なくないように思えたのだ。
今後、田中と同じように、千賀もメッツの主戦格として評価を確立していけるのかどうか。ヤンキースで7年契約をまっとうし、シーズン通算78勝、プレーオフでも鮮やかな実績を残した田中は“ニューヨークの成功者”として記憶されている。同じように成功してくれれば、と夢見るメッツファンは少なくないのかもしれない。
もっとも、千賀が似ているのはあくまでメジャーデビュー直後の田中の話。ここから先、投手としてのタイプ的には先輩とは違う方向性で進むことになる可能性が高い。2年目以降、スライダーを軸とした変化球の精度と投球術に活路を見出していった田中と比べ、千賀はより純粋なパワーピッチャータイプ。だとすれば、やはり速球とフォークのコンビネーションが生命線であり続けるに違いない。