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核心にシュートを!BACK NUMBER
「(三笘)薫さんにはよく聞きますね」田中碧ヒザの負傷離脱も…ブンデス2部で“24歳の進化”とは「ここで学んだ意味があった、と」
text by
ミムラユウスケYusuke Mimura
photograph byKiichi Matsumoto/JMPA
posted2023/04/12 17:21
日本代表3月シリーズでの田中碧。カタールW杯のヒーローは、負傷離脱したものの24歳シーズンにおいて着実に進化していた
「あのコースにパスを通したのもそうだし、『こうなればゴールになる』と先の展開まで見えていたんです。『アシストのアシスト』の方が僕は多くて。もちろんアシストも嬉しいですけど、ゴールにつながる流れが全て見えたうえで意図的に作れたゴールだったから喜んだのです」
「アシストのアシスト」。つまり、ゴールの起点を評価する指標「セカンドアシスト」だった。このデータもドイツではしっかりカウントされている。その価値は、好成績を残した選手の名前を見れば一目瞭然だ。今シーズンのブンデスリーガ1部であればゲッツェやキミッヒが、2015-16シーズンには香川真司がトップになっている。
W杯でのヒリヒリした感覚を忘れないようにしよう
ただ、今年に入ってからの田中の存在感が増しているのは、数値化できるもの以外からも見て取れる。
ドルトムントのベリンガム顔負けのゲーゲンプレスを見せて相手エリア付近でボールを奪ったり、自陣まで長い距離を走ってボールを奪いきったり、守備のデュエルを連続して挑んでマイボールにしたり……。今年先発した7試合で、デュエル勝利数がチームで2位以上となったのが3試合、プレスをかけにいった数でも4試合で2位以上に入っている(26節終了時)。
チャンスに顔を出したり、ピンチになりそうな場面を未然に防いだりする機会が、圧倒的に増えている。田中がドイツに渡ってから最高のパフォーマンスをしているのは今年に入ってからだと断言できる。
カタールW杯を経て、2023年に入って存在感を増しているのは何故なのか。田中のなかに答えはある。
「あの大きすぎる舞台を経験したからこそ、少し余裕ができたのかなと……。(普段の環境に)慣れていってしまうので、あの感覚はいずれなくなるのだろうと思います。ただ、W杯での『これができなかった』という感覚も、あのヒリヒリした感覚も、『毎日、毎日、忘れずにしよう』と思いながらやってきたのでね」
「すごく苦しい」という危機感の理由
もちろん、それだけのパフォーマンスを発揮できているからこそ、危機感も覚えている。
「感覚的には良くなっています。ただ、(ゴールなどの)結果がついていないというのが、自分の中で“すごく苦しい”。何回もチャンスがあるんですけど、それを外している部分があるので」
「すごく苦しい」という表現がリアルなのは、結果が出なくてもチャンスに顔を出す動きを続けているからだ。
本当に価値があるのは、“努力すること”ではなく、努力を『続けること』である。