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なぜ長谷部誠39歳は「引退確率99%」から“欧州17年目の現役”を選んだか…「悔しさの中に喜びがあった」心に火をつけた“CL出番なし”

posted2023/04/12 17:20

 
なぜ長谷部誠39歳は「引退確率99%」から“欧州17年目の現役”を選んだか…「悔しさの中に喜びがあった」心に火をつけた“CL出番なし”<Number Web> photograph by Yusuke Mimura

3月の長谷部誠の会見。現役続行とフランクフルトでの日本のスクール事業についての発表だった

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ミムラユウスケ

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Yusuke Mimura

 日本代表の「17番」を背負った長谷部誠と、現在の「17番」田中碧の今季ブンデスでの歩みを検証した。(全2回の1回目/#2も)

 3月21日の午後1時。村上宗隆のサヨナラタイムリーで日本代表のWBC決勝進出が決まってまもない時刻に都内で行なわれたのが、アイントラハト・フランクフルトの長谷部誠の緊急記者会見だった。日本中が「侍ジャパン」フィーバーにわいていたために、その価値と比較すると信じられないほど報道されなかった、長谷部の決断と記者会見。前編ではそれらを詳細にお伝えする。

「引退会見?」いや、そうじゃないよと(笑)。

「まさか、引退するの?」

 3月21日の午前10時ころ。日本に到着した長谷部がスマートフォンの電源を入れると友人たちから大量のメッセージが届いていた。この日の朝7時39分、アイントラハト・フランクフルトの公式Twitterアカウントの日本語版で、長谷部が「日本で」緊急の記者会見を行なうというアナウンスがあった。ただ、会見で何が発表されるのかは、“あえて”明かされていなかったから、友人たちは気をもんだようだった。

 長谷部は記者会見の冒頭にこう語った。

「友だちから、『引退会見か?』というメッセージがたくさんきたんです。いや、そういうことじゃないよと(笑)。今回、日本でこうして自分の契約延長記者会見をできることを本当に嬉しく思います」

昨年時点では「現役を退く確率99%」だったが

「2022-23シーズンをもって現役を退く確率は99%」と、昨年の時点でそう話していたのは長谷部自身だった。

 しかし、信念を持って生きる男は、99%ではなく、1%の方をとった。出した答えは、引退ではなく、現役続行だった。なぜ、1%の道を選んだのか。その理由について探っていく前に、ここまでの流れを整理していこう。

 ここ数年にわたってブンデスリーガやフランクフルトの数々の最年長記録を更新し続けている長谷部の契約延長という慶事と、すでに小・中学生向けのサッカースクールを運営している長谷部と、フランクフルトが協力して新たな中学生向けアカデミーを日本で設立するタイミングが重なったことで、特別に日本で記者会見が行なわれた。

「これで、アイントラハト・フランクフルトでの10シーズン目を迎えることになります(中略)。ここで本当に多くのものをこれまで勝ちとってきました。カップ戦の優勝であったり、ヨーロッパリーグ優勝。今シーズンはチャンピオンズリーグでベスト16にもいきました。ただ、良い時だけではなくて……。2016年には、入れ替え戦で降格の危機も経験しました。

 良い時だけではなく、良くない時もアイントラハトで様々なことを経験してきたので、自分の大きな人生の一部になっています」

「人生の一部」という表現は大げさでも何でもない。長谷部は引退後も4シーズンはフランクフルトでコーチなどに従事するという異例の“半生涯契約”を結んでおり、選手としての契約を延長するか、引退するかをも「自ら選べる」特権を与えられている。

【次ページ】 長谷部が現役を続けると決めた最大の理由は…

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