- #1
- #2
核心にシュートを!BACK NUMBER
「(三笘)薫さんにはよく聞きますね」田中碧ヒザの負傷離脱も…ブンデス2部で“24歳の進化”とは「ここで学んだ意味があった、と」
text by
ミムラユウスケYusuke Mimura
photograph byKiichi Matsumoto/JMPA
posted2023/04/12 17:21
日本代表3月シリーズでの田中碧。カタールW杯のヒーローは、負傷離脱したものの24歳シーズンにおいて着実に進化していた
守備の負担の割合が高いポジションの選手が活躍した場合には、1部で活躍する可能性は高い。一方で、攻撃的なポジションの選手が2部で活躍したとしても、1部で通用する可能性が高いとは言えない。そんな傾向がある。
なぜそのような傾向があるのか。ヒントは、板倉のこんな言葉に隠されている。
「(ドイツ2部では)縦に行って、帰ってくるという動きが多い。最初、オランダ(1部)からドイツへ行った時、『キツイ!』と思ったんですよ。というのも、日本とかで『ボールを回されていて、やっと奪いました。みんな疲れています。ちょっとゆっくりしたい』という時間帯でも、ドーンと(前に)行くんです」(「Going!」より)
「ここで学んだ意味があった」という時間に
1部のサッカーは再現性のある攻撃をしかけるため、組み立てから時間を使うことも多い。それに対して、2部ではチャンスを多く作るために、中盤を飛ばしてでも、ボールがお互いのゴール前をいったりきたりする展開が続く。
だから、守備の選手からすれば、1部に上がると、2部にいたときよりも余裕を持ってプレーできる側面がある。一方、攻撃の選手は、2部時代よりも1部では得られるチャンスが少ないから、苦しんでしまう。
実際、昨シーズン2部で優勝したシャルケの面々を見ても、30試合に出場して30ゴールを決めたテロッデは、今はスタメンから外れ、苦しんでいる。一方、今シーズンの板倉はボルシアMGの守備の要として力を発揮している。そう考えると、ダブルボランチの一角としてプレーしている田中が、1部に上がったときに陽の目を浴びることになっても不思議ではない。
「1部に昇格したときには、相手も違うので。相手のレベルが上がったときに、多分、自分のパフォーマンスは変わるはずで。そうなれば『成長するため、環境を変えた2年間は良かった』となるだろうし。僕は“雰囲気”で語られがちなタイプなので仕方がないですけど、『ここで学んだ意味があった』という時間にしないと」
川崎フロンターレというボールを握ることのできるチームを離れて2年。主導権を相手に握られることも多く、激しいデュエルが求められるドイツ2部のチームを選んだのは「遠回りだ」という意見は、あるだろう。ただ、田中に迷いはない。現状ではどのような試合だと活躍しやすいのかも、川崎時代と比較してどういうところが伸びて、どんな部分が一時的に後退しているように感じるのかもわかっている。
「あとはもう自分次第なので!」
だから、3月28日のコロンビア戦のあと、デュッセルドルフでの戦いについて明るく話していた。
「あとはもう自分次第なので。(シーズン終了までの)2カ月間を楽しみにしていますよ、僕自身がね!」
確かに、今回のケガは大きな痛手だ。
しかし――。
本来ならば田中の良さは可視化しづらいはずなのに、デュッセルドルフでは一目でわかるほどの存在感を放つようになった。それが進化の証であるし、“わずか2年”でそこまで変わったことに意味がある。
というのも、田中は、2026年の北中米W杯での活躍を大きな目標にしつつも、こう語っているからだ。
「僕は結構(成長が)遅いんです。だから、選手として一番いい時は多分2大会後(2030年W杯)かなと」(GOETHE Webより)
「成長が遅い」という自らの資質を、明るい未来を創るためのモチベーションにして努力できるのが、田中という選手であることを忘れてはいけない。ボールを満足に蹴れない期間でも、彼は亀のようにコツコツと努力を続けていくはずだ。
<#1「長谷部誠」編からつづく>
記事内で紹介できなかった写真が多数ございます。こちらよりぜひご覧ください。