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「WBC栗山監督に選手へのリスペクトを感じます。ただ…」W杯後の“森保語録”に6つの変化?「切り返しの妙」を感じた瞬間とは
text by
ミムラユウスケYusuke Mimura
photograph byKiichi Matsumoto/JMPA
posted2023/04/05 17:02
日本代表3月シリーズは1分1敗のリスタートとなったが、森保一監督のコメントには注視してみたいものがある
そんななかで、森保監督は、身体が資本の選手たちに上級クラスのシートを譲り、エコノミークラスの通路側の席に陣取った。さらに機内サービスがひと段落したタイミングで監督はCAを呼び止め、数分にわたって言葉を紡ぎ、頭を下げていた。当時のスポンサーである航空会社の対応に感謝したものだろうが、そこでしっかり頭を下げられるのが森保監督だ。そういう人だというのはある程度認知されているから、公の場では自らが発信するメッセージに特化するべきだろう。
話を戻すと、今年に入ってからの記者会見では本題とは別の話を枕詞にするのを減らした結果、言葉に重みが出てきた。
また、余計なものがなくなったために、監督の考えや意図を、聞き手としては理解しやすくなった。どのような想いで選手を選考し、試合に臨もうとしているのかをわかりやすく説明するというのは、ファンに謝辞を伝えること以上のファンサービスではないだろうか。
先ほどの最初の質問の答えとしては…
〈ポイント2:質問への回答を意識するようになった〉
これは3月23日、ウルグアイ戦の記者会見でのやり取りから見ていこう。筆者はこんな質問をした。
「先日の記者会見はW杯での悔しさや反省がすごく盛り込まれた、監督の話だったように感じます。それは2月にヨーロッパをまわって選手たちの魂の叫びや想いを聞いて上手くまとめている感じですか? それとも、監督が意識的に明確かつ、具体的に発信しようとしたからなのでしょうか?」
これに対して森保監督はこう答えた。
「W杯の経験を踏まえて、悔しさであったり、新たな自分たちの夢や目標につながることを経験できたことは、私だけでも、選手だけでもなくて。両方が……」
そのあとも話は続いたので一部省略するが、結びの部分がこれまでとは異なっていた。
「先ほどの最初の質問(の答えとして)は選手、我々経験したスタッフも同じ思いをもって、2026年に向かって、さらなる成長と、さらなる結果を出せるようにということで、考えているのは同じような気持ちだと思います」
最後に質問の答えに戻ってきたというのが、大きな変化だと感じた。
以前であれば「少し答えから外れてしまいましたが」、「これで(回答として)あっていますかね?」と愛想笑いを交じえて答えるくらいで、質問に対して監督はどう考えているのかがわかないまま……ということがよくあった。それがなくなったのだ。
さらにいえば、監督が記者の質問への答えをきちんと踏まえるようになったことで、今後は、不明瞭な質問をした記者は批判されることになる。記者も適切な質問をできるように勉強しないといけない。つまり、監督の変化はメディアの質を上げることにつながるかもしれない。
初戦の主将を「遠藤航で」とハッキリ明言した
〈ポイント3:結論を初めに口にするような姿勢が出てきた〉
ポイント3の象徴的な場面は、カタールW杯後の初陣となるウルグアイ戦前日の記者会見でも見られた。