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『THE FIRST SLAM DUNK』はなぜマンガ版を知らない世代にも「刺さる」のか? “原作未読組”を直撃「メガネ君が気になりました」
text by
いしかわごうGo Ishikawa
photograph byJIJI PRESS
posted2023/03/29 17:29
韓国の映画館に設置された湘北高校の選手たちのパネル。『THE FIRST SLAM DUNK』は日本だけでなく海外でも大ヒットを記録している
同様の例としては、「宮城家がその後どうなったのか。原作を読んで確かめたいです」という声も聞いた。「宮城家は原作に出てこないんだよ」とこちらが伝えると「えっ……?」と絶句されてしまった。
思えば『SLAM DUNK』は、登場人物の家庭環境がほとんど描かれていない作品だ。原作の主人公である桜木花道や、ライバルの流川楓の家族構成すら明らかになっていないほど「謎だらけ」なのだ。宮城リョータが沖縄出身で妹がいたことだって、今回の映画で初めて明かされたのである。あらためて『SLAM DUNK』の魅力やさまざまな謎に思い至るという意味でも、“原作未読組”の若い世代の率直な感想はとても興味深かった。
ラストシーンに込められたメッセージ
映画のラストでは、劇中に登場する“ふたりの選手”がアメリカで対峙する場面が描かれた。
2004年に描かれた「あれから10日後―」という最終回後のエピソードでは、日本人初のNBAプレイヤーとなった田臥勇太と思われる存在について話すシーンがあった。どこかで現実との接点、「今」とのつながりを読者に伝えたかったと、作者はインタビューで明かしている。
2023年現在、八村塁と渡邊雄太がNBAでプレーしており、日本人対決もすでに現実のものとなっている(八村がプレーするレイカーズは、作者が「自分の原点」と語るお気に入りのチームでもある)。彼らと同様に作品のキャラクターたちも「今」を生きていて、それが未来につながっている。そんなメッセージを感じるラストシーンだった。
昨年12月に封切られた『THE FIRST SLAM DUNK』は、公開から4カ月が過ぎようとしている。この4カ月という時間は、原作の作中で描かれた期間と同じである。今からでも遅くはない。直撃世代も原作未読組もぜひ映画館に足を運んで、この作品に詰まった熱い思いを受け止めてほしい。
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