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『THE FIRST SLAM DUNK』はなぜマンガ版を知らない世代にも「刺さる」のか? “原作未読組”を直撃「メガネ君が気になりました」 

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いしかわごう

いしかわごうGo Ishikawa

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photograph byJIJI PRESS

posted2023/03/29 17:29

『THE FIRST SLAM DUNK』はなぜマンガ版を知らない世代にも「刺さる」のか? “原作未読組”を直撃「メガネ君が気になりました」<Number Web> photograph by JIJI PRESS

韓国の映画館に設置された湘北高校の選手たちのパネル。『THE FIRST SLAM DUNK』は日本だけでなく海外でも大ヒットを記録している

「あのメガネ君にはどんな背景があるんだろう?」

 きっかけとしては「友達から面白いと勧められた」「SNSで話題になっていた」など、評判を聞いて劇場に足を運んだパターンが多いようである。まず彼・彼女らを魅了したのは、作品を彩る個性的なキャラクターたちだ。湘北高校のスタメン5人を筆頭に、『SLAM DUNK』の魅力的な登場人物は、時代や流行に関係なく普遍的に「刺さる」ということなのだろう。

 面白かったのが、「むしろ主力以外のキャラクターに惹かれた」という声だ。

 例えば映画で初めて『SLAM DUNK』に触れた20代の女性Aさんは「メガネ君と呼ばれている上級生の存在が気になりました」と話してくれた。

 メガネ君とは、湘北高校の副キャプテンである木暮公延のことだ。バスケ部ではいわゆるシックスマン(スタメンではないが、どの選手と交代しても活躍が期待出来る存在)の役割を果たしており、湘北に欠かすことの出来ない名脇役である。ただ映画に限れば、プレーの見せ場はないに等しい。時間の都合もあり、原作の名シーンやキャラクターの説明を大胆に省略した形でストーリーは進むため、木暮も詳しい紹介を省かれた存在になっている。

 原作を熟知している古参ファンからすると「映画には出てこないけど、木暮には名シーンがいくつもあって……」などと歯がゆい思いも抱えてしまうのだが、意外なことにそれが“初見勢”には逆にいいフックになるというのだ。Aさんは語る。

「試合中に安西先生から『赤木君と木暮君がずっと支えてきた土台の上に、これだけのものが加わったのが湘北だ』と言われてましたよね。『じゃあ、あのメガネ君にはどんな背景があるんだろう?』って気になるんですよ。あれで原作を読みたくなりました」

 なるほど。深掘りされていないからこそ、作中で触れられるちょっとした一言が引っかかるというわけである。すべてを描かないことで「もっと知りたい」という渇望感や興味が刺激され、鑑賞後に原作を読むというサイクルが生まれる――これは気づかない視点だった。

【次ページ】 ラストシーンに込められたメッセージ

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