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大阪桐蔭に「0-1」「5回まで無安打投球」“メンバー全員秋田出身”の公立校・能代松陽の本気を現地記者は見た…エース森岡大智「満足できません」
posted2023/03/28 17:04
text by
田口元義Genki Taguchi
photograph by
JIJI PRESS
7球。
1回のピッチングを始める前に設けられた投球練習での球数は、能代松陽のエース、森岡大智にとってその試合のピッチングをマネジメントする上でとても重要だ。
「自分は試合が始まった1球目の感覚をすごく大事にしているので。最初の投球練習の7球でいい球、悪い球を見極めて、キャッチャーの柴田(大翔)と話しながら、その日のいいボールを決めています」
大阪桐蔭を5回まで「無安打」
前身の能代商から、春夏合わせて甲子園で初のベスト8を懸けた大阪桐蔭との試合、森岡は「調子的にはコントロールも真っすぐも全然よくなかった」と自覚していた。
1回。相手先頭の小川大地への初球をストレートから入り空振り三振に切った。その後、ストレート中心の配球で2者連続フォアボールを与えた森岡は、4番の南川幸輝と5番の佐藤夢樹にはスライダー中心に切り替え、連続三振でピンチを脱した。
森岡が悟る。
この試合はスライダーだ、と。
カーブ、カットボール、チェンジアップと多彩な変化球を操る森岡にとってスライダーとは、「カウントが取れるし、三振を狙いにもいける」と自信を覗かせるように安定しており、利便性がある球種でもある。
1回に25球も費やした能代松陽のエースが、スライダーを軸とした2回から豹変する。この回9球、3回5球、4回15球、5回10球。秋の明治神宮大会の覇者であり、このセンバツでも優勝候補の筆頭に挙げられている横綱相手にノーヒットに封じ込めていた。
森岡がピッチングの手応えを話す。
「相手は繋いでくる打線で、コンパクトにバットを振ってくるのはわかっていて。真っすぐの速さは出ていませんでしたけど伸びはありましたし、変化球でバットの芯を外せて打ち取れたのはよかったと思います」