甲子園の風BACK NUMBER
スカウト「センバツで最も評価している打者」だが…なぜドラフト候補スラッガー真鍋慧(広陵)は「自分で自分を苦しめた」と語ったか
posted2023/03/29 06:00
text by
間淳Jun Aida
photograph by
JIJI PRESS
仲間への感謝と自分への不甲斐なさが交錯していた。2003年以来、4度目のセンバツ優勝を目指す広陵(広島)が海星(長崎)を3-2の逆転で下し、ベスト8進出を決めた。だが、今大会ナンバーワン打者とも評される広陵の真鍋慧(けいた)選手に笑顔はなかった。試合後、最初の言葉は反省だった。
守備での失点につながるミスに猛省していた
「失点に絡むミスをしてしまい、打席でも甘い球を見逃してしまいました。とても悔しい内容でした」
真鍋選手がミスと振り返ったのは、2回の守備だった。2アウト二塁の場面で、広陵のセカンド松下水音(みおと)選手は勢いの弱いゴロをダッシュで捕球し、そのまま走りながら体をひねって一塁へ送球。これが、ややライト側に逸れるワンバウンドとなり、体を伸ばしたファースト真鍋選手のミットを弾く。この間に二塁ランナーがホームに還って、海星に先制された。さらに、続く打者のタイムリーヒットで2点を追う展開となった。
失点につながった記録は松下選手のエラーだった。しかし、ファーストミットに届いていただけに、真鍋選手は自分を責めた。
「自分のミスです。ファーストとしてカバーすべき送球でした。松下はよく投げてくれたと思います」
「球を引きつけて打つことを意識していましたが…」
守備で精彩を欠いた分、持ち味の打撃で存在感を見せたいところだった。ただ、聖地に快音は響かなかった。3打数ノーヒット、フォアボール1つ。真鍋選手は「みんなのおかげです。1点差の接戦を勝ち切れたのは、冬の練習をチームで頑張った成果だと感じています」とチームメートに感謝した。
第1打席は1アウト二塁のチャンス。カウント2ボール2ストライクから、外角のチェンジアップをスイングした。打球は痛烈だったが、海星の吉田翔投手にワンバウンドのゴロを捕球され、ランナーを還せなかった。
第2打席は4回、先頭で打席に入った。1ストライクから、外角低めの直球を引っ掛けてファーストゴロ。チャンスメークできなかった。海星の吉田投手はゆったりとしたフォームから120キロ台の直球に球速差10キロほどのチェンジアップとスライダーを組み合わせて、打者のタイミングを崩す投球スタイル。真鍋選手は術中にはまった。
「球を引きつけて打つことを意識していましたが、タイミングが上手く調整できませんでした。スイングも大きくなってしまいました」