大阪桐蔭は森岡をどう見たか？

　6回に初ヒットを許した森岡は、7回に先頭の南川にスリーベースを打たれ、1死三塁からスクイズで先制点を許した。この1点が結果的に試合の趨勢を分けたわけだが、8回を投げ99球、2安打、4四球、1失点。そのパフォーマンスは、ジャイアントキリングすら予感させるほどのインパクトがあった。

　得点の口火を切った大阪桐蔭の主軸、南川が嘆息を漏らすように言葉を吐いた。

「映像で見ていたよりストレートが速くてびっくりしました。最初のほうは少し受け身になっていたので、『ストライクならどんどん振っていこう』と攻めの気持ちでいきました」

　緊迫した試合をベンチから見守っていた大阪桐蔭の監督、西谷浩一も、森岡のピッチングに脱帽するかのように短く評す。

「ストレートが強く、コントロールも変化球もよかったです。いろいろ考えてはいましたけど、なかなか対応できませんでした」

全員「秋田出身」の公立校

　全国から有望選手が集まる私立の大阪桐蔭は、現時点でこの世代では“日本一”のチームである。対する能代松陽は県立高校であり、メンバー全員が地元秋田の出身だ。

能代松陽の選手たち ©JIJI PRESS

　大阪桐蔭優勢。この図式は高校野球のいわば常識のようでもあった。そんな下馬評に本気で抗ったのが、能代松陽というチームだ。

　力を示したエースの森岡が強く言った。

「相手をすごいとか見ないで。同じ高校生だと思って戦っていました」

　日本一。

　それは、常に頂点を宿命づけられる大阪桐蔭だけでなく、全国の高校に平等に与えられた目標であり、志でもある。

　実現できるかどうかは、本気度による。能代松陽にはそれがある。

昨夏は完敗…震えた先輩の言葉

　森岡の逸話を挙げるなら、昨年の夏が印象深い。

　能代松陽は初戦で聖望学園に2-8で敗れた。エースの三浦凌輔から継投して2番手で登板した森岡は、4回を投げ8安打5失点と相手との力の差を痛感させられた。

　ここで現実に打ちひしがれることなく顔を上げ、高校野球の頂を見据えられたのは先輩エースの言葉があったからだ。

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