聖望学園戦後のクールダウン中。森岡は三浦から意志を託された。

「来年も甲子園に出ろよ。俺らの分も頑張って、日本一になれ」

　気持ちの昂りを、森岡は大切にしている。

「あの時、グッときました。三浦さんの言葉があったから、日本一という目標を見失うことなくやれていると思います。（東北勢では）仙台育英が先に日本一になりましたけど、新チームになってから『2番目に優勝するのは自分たちだ』って気持ちが強くなりました」

　監督の工藤明が掲げる「森岡を中心に守り、絶対に崩れない、粘りの野球」を体現するチームは、昨秋の東北大会準決勝で夏の全国制覇のメンバーが名を連ねる仙台育英に1-2と善戦し、センバツ出場を実現させた。そして、本番では絶対王者の大阪桐蔭を苦しめた。

大阪桐蔭に0-1で敗れた ©JIJI PRESS

「0-1」も厳しい表情…能代松陽のポテンシャル

　誰も疑うことはないはずだ。能代松陽は日本一を目指すにふさわしい、と。

　それだけのチームであると示したのが大阪桐蔭戦であり、試合後の取材だった。

「野球としては及第点」

　そう評価しながらも、監督の工藤の表情は終始厳しかった。それは好ゲームの立役者である森岡に対しても同じだった。

「結果だけ見ればナイスピッチングなんですけど、回の先頭バッターにフォアボールやヒットを与えたり、課題はあります。厳しい言い方をすると、森岡もまだまだ。バッテリーとしても甘い！」

　この悔しさこそが原動力なのである。

　エースの森岡も監督に呼応するように言う。

「甲子園で1回勝っただけでは満足できません。夏にまた帰ってきて日本一を目指します」

　満足するのは、日本一になった時のみだ。

　能代松陽の強く、断固たる決意が充満していた、大阪桐蔭戦だった。

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