オリンピックへの道BACK NUMBER
立ち尽くす三浦に木原は「見てごらん」と声をかけ…“りくりゅう”が築き上げた、ふたりならではの世界「(僕は)飼育員なんで」「(私は)動物か?」
text by
松原孝臣Takaomi Matsubara
photograph byAsami Enomoto
posted2023/03/28 17:02
フリーの後半、ジャンプで転倒した三浦璃来は演技後に顔面蒼白で立ち尽くしたが、木原龍一が近寄り…
「過去の自分たちに勝つ」進化を目指す姿
「誰かに勝とうというのではなく、(勝とうとする相手は)過去の自分たち。0.1点でもいいから勝っていこう」
その言葉を胸に刻み、一歩ずつ向上していくことを志してきた。
世界選手権でも、進化を目指す姿勢があった。例えばジャンプの構成だ。
グランプリファイナルでの3連続ジャンプは、トリプルトウループ-ダブルトウループ-ダブルトウループにしていた(試合では3連続のダブルトウループの実施となった)。基礎点は6.80点だ。
四大陸選手権からはトリプルトウループ-ダブルトウループ、その次をダブルトウループからダブルアクセルに変更して臨んでいる。これで基礎点は8.80点にアップ。四大陸選手権では成功に至らなかったが世界選手権では決めて、GOEによる加点も含め10.00点を得た。僅差の中で勝負を決する大きな要素でもあった。
過去の自分たちに勝っていく――それは優勝したあとも変わらない。マルコットコーチは優勝してなお、失敗の要因を検討し来シーズンへ向けて話すふたりがいたことを明かしている。
「ショートで80点を超えて、うれしい気持ちとフリーのすごく悔しい気持ちがあります」
三浦はあらためて振り返る。
それでも優勝した喜びがある。
木原は一度は競技から離れることも考えていた中で三浦と出会い、再起を期した。2013年から10年の長きにわたってペア種目に取り組んできた木原にとってこの優勝は感慨深い。