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村元と高橋は互いの背中に腕をまわした…“かなだい”が感じた『オペラ座の怪人』を一緒に滑れる幸せ「一人で滑るより喜びが2倍、3倍」
posted2023/03/29 17:00
text by
松原孝臣Takaomi Matsubara
photograph by
Asami Enomoto
演じ終えた瞬間、黒を基調とした衣装に身を包んだスケーターは涙ぐんだ。歩み寄った白の衣装のスケーターと、互いに背中に腕をまわした。
やっと、やっとできた(村元)
それは感情を分かち合うようでもあり、互いを包みこむようでもあった。その光景は、2人が進んできた道を伝えるかのようでもあった。
3月25日、フィギュアスケート世界選手権の最終日。アイスダンス・フリーダンスが行われた。村元哉中と高橋大輔はフリーの自己ベストを更新し合計得点でシーズンベストをマーク、日本のアイスダンスでは最高順位タイの11位で大会を終えた。
2人は演技を終えたあとの会話を明かす。
「やっとできた、ありがとうみたいな。同じことを繰り返してました」(高橋)
「とにかくミスなく終えたので、やっと、やっとできた、ほんと、同じことを繰り返していました」(村元)
2人が織りなす『オペラ座の怪人』は…
フリーダンス『オペラ座の怪人』は、高橋がシングル時代に世界選手権で銀メダルを獲得した2006-2007シーズンに使用していたことでも注目を集めてきた。
高橋はむろんのこと、村元も思い入れがあった。
「大ちゃんと一緒にこのプログラムを滑るとは夢にも思っていませんでした」
思い入れがあるからこそ、アイスダンスではシングルと別の世界を築き上げたいと考えていた。
それははじめから姿を見せていた。シーズンのスタートから、2人が織りなす『オペラ座の怪人』はたしかな世界を形作っていた。音楽と調和した踊りや動作は2人ならではの魅力を放っていた。
全日本選手権でのまさかの転倒
だからこそ、競技のルールの上で、より高いレベルの演技を、完成度を求めた。ただ、求めながらも納得のいくまでには届かず、これまでのシーズンを過ごした。