オリンピックへの道BACK NUMBER
立ち尽くす三浦に木原は「見てごらん」と声をかけ…“りくりゅう”が築き上げた、ふたりならではの世界「(僕は)飼育員なんで」「(私は)動物か?」
text by
松原孝臣Takaomi Matsubara
photograph byAsami Enomoto
posted2023/03/28 17:02
フリーの後半、ジャンプで転倒した三浦璃来は演技後に顔面蒼白で立ち尽くしたが、木原龍一が近寄り…
日本のペアスケート界を変える日に
「まずはやめなくてよかったなという思いもありますし、初めての世界選手権がさいたまで、10年前に今のポジションにいると言われても信じられなかったかなと思います」
三浦にとっても、喜びはひとしおだ。
「いやあ、(現在の位置は)想像できなかったですね。ほんとうに組んでくれてありがとうございます(笑)」
そしてペアという種目の魅力を語った。
「ノーミスで終われたときに『やったね』という気持ちを分かち合えるのがペアの好きなところですね」(三浦)
「もちろんシングルの方も苦労はたくさんあると思うんですけど、ペアというのはふたりいるので、苦労も2倍になりますけど、何かを達成できたとき(の喜び)というのは2倍、3倍になっていくと思いますし、ペアの素晴らしさじゃないかなと思います」(木原)
ペアの魅力を知るからこそ、木原はこうも語っている。
「日本のペアスケーターがどんどん増えて、10年後、20年後に『この日から変わった』と言ってもらえるような日が来ることを願っています」
優勝したことで、今回の世界選手権に続き、来シーズンの世界選手権のペア出場枠「3」を日本にもたらした。現時点ではそれをいかす数のペアは日本にいないことが惜しまれるが、三浦と木原は自分たちの役割を全うしたことにかわりなく、功績は計り知れない。
「私たち、合わせているんじゃなく合っているんだよね」
三浦の以前の言葉が象徴するように、スケート、関係性も含め相性のよさを武器とするふたりは、さらなる進化を期して進んでいくだろう。
取材が終わると木原は言った。
「(僕は)飼育員なんで」
「飼育員? 動物か?」
と三浦が返す。
周囲を笑顔に包んだやりとりも、ふたりのありようを示していた。
記事内で紹介できなかった写真が多数ございます。こちらよりぜひご覧ください。