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藤井聡太五冠vs.羽生善治九段は例えるなら「ディープ対ルドルフ」 競馬好き、高見泰地七段が解説する“世代を超えた歴史的一戦”
text by
茂野聡士Satoshi Shigeno
photograph byJIJI PRESS
posted2023/02/25 06:02
棋界のみならず、多くの注目を集めている藤井聡太王将と羽生善治九段の王将戦七番勝負。解説に定評のある高見泰地七段に話を聞いた
「出るとしたら第5局だと思います。後手横歩取りは5年くらいまでは指されていた戦法ですが、AIにはハッキリと分が悪いと出ているため、自分も指さなくなりました。そう考えると、羽生先生に地力があるからこそ勝てているのだと思いますね。
第5局以降での注目は……もしこのまま先手番が勝ち続けるシリーズになるとすれば、最終第7局の振り駒(※対局前に先手・後手を決める)になるのではないでしょうか。藤井さんは現在、先手番で26連勝中です。先手番の強さを生かしつつ、他の棋士なら間違えかねないところでも最善を選び、完璧な勝ち方を見せていますから。ここまでの流れから、第5局は先手番の藤井さんが勝つ可能性が高いと見る向きは多いでしょう。ただここで羽生先生が勝利したら大チャンスが巡ってくるし、もし負けたとしても、三たび先手番の第6局で取り返して、第7局までもつれる可能性もあるのでは、と感じます。そう考えるとやはり、第7局の振り駒は大きく運命を左右するのでは、と感じています」
この対局が始まりの一歩なのではとも感じます
盤上の戦いとともに、今回の王将戦で注目したいのが“将棋界の第一人者の継承”でもある。高見は第3局で立会人を務めた島朗九段から、このような言葉を聞いたという。
「藤井さんは羽生さんから帝王学を学んでいるんだろうね」
これまで将棋界は、時代を象徴する棋士が現れ、まるでその伝統を継承するかのように戦いの歴史を紡いでいった。