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「羽生(善治)先生が入ってきた瞬間、鳥肌が立ったんです」白熱の王将戦で高見泰地七段が感じた“冷気”「まるで『3月のライオン』のようで…」
posted2023/02/25 06:01
text by
茂野聡士Satoshi Shigeno
photograph by
JIJI PRESS
20歳の藤井聡太五冠にタイトル通算99期の羽生善治九段が挑み、“天才対決”と称される第72期王将戦。ここまで4局が行われ、2勝2敗のタイ。さらに主催新聞社の「勝者の記念撮影」もSNS上で話題になっている。第3局で副立会人を務めた高見泰地七段に、“レジェンド”羽生善治九段について聞いた。(全3回のうち第2回/「藤井将棋」編は#1、続きは#3へ)
初めて指導対局、相手は羽生善治だった
今年1月から始まった王将戦で通算タイトル100期を懸けて藤井聡太五冠に挑んでいる羽生善治九段。昭和の終わりから平成の時代、将棋界の頂点に君臨したスーパースターであることは誰もが知るところ。そして高見泰地少年(現七段)も、幼少期に羽生のスター性を目の当たりにした1人である。
時は2001年のことである。
「実は、将棋で初めて指導対局をしてもらったのは羽生先生なんですよ」
高見は顔をほころばせた。
前年に起きた三宅島噴火を受けての将棋チャリティーイベントが新宿駅構内で行われ、将棋を覚えたての“高見泰地くん”も参加した。そこで指導対局を受けたのが、羽生善治その人だったのだ。当時30代前半の羽生は複数タイトルを戦うのを日常としていた時代だった。高見はその対局について、鮮明に記憶している。
「6枚落ちだったんですが、自分が弱すぎたにもかかわらず、羽生先生は一手違いにまで持ち込んでくれたんです。今思えば、しっかりと僕に最後まで指させてあげようという羽生先生の優しさなのでしょうし、子供心にも“プロってカッコイイな。それも一番のトップなんだから”と思いましたね。だから……」
ずっと時代を築いてきた方
高見は少年のような表情になって、このように言い切る。
「将棋にハマったのは羽生先生の影響だなと思うんです」