風間　方向を鋭角的に変えています。方向を変えてもメッシの体とボールの関係性が同じで、進む方向からボールがブレていませんね。手で持って走っているような感じさえします。これはボールタッチが正確だから。例えば、90度方向を変えるなら、ボールの真横をタッチすればいいのですが、それが正確でないとボールにヘンな回転がかかります。進む方向へ真っ直ぐ転がらないので、進む方向からボールがズレます。そうするとボールの軌道を修正するために余分な動作が必要になりますよね。そのぶん遅くなるわけですが、メッシのドリブルはあまりヘンな回転がかかっていません。動きが弧を描くようにはなっていなくて、真っ直ぐ進む。方向を変えるなら、次に進む方向へ真っ直ぐ進んでいます。

メッシはカタールW杯、名を上げたグバルディオルを完全に翻弄した　©Kiichi Matsumoto/JMPA

子供のときのままというのが一流の証拠ですよ

――ペレの映像を見ると、信じられないようなボディバランスで相手を抜いているシーンがよく出てきます。体の軸からボールが外れても強引な復元力で元に戻してしまう。あれはあれで凄いのですが、メッシの場合はずっと同じで姿勢で、あんまり体幹も使っていないように見えます。

風間　体幹は相当強いとは思いますが、確かに体幹の強さありきではありませんね。

――メッシの小学生のときの映像を見ると、基本的に今とやっていることが変わらない。子供のときのメッシのまま大人になっている感じがします。

風間　子供のときのままというのが一流の証拠ですよ。マラドーナもクライフも皆そうです。面白いのは、メッシがバルセロナの育成チームのテストに来たときに、5人のコーチのうちの3人は「プロになるのは難しい」と判断したのだそうです。2人がOK、3人がNOだった。体が小さいので難しいというのが3人の意見だった。それで、上の年齢カテゴリーでプレーさせてOKが出た。年齢が上で体格も大きい選手の中で、かなり戦った。プロになれるかどうか、彼らはそういうところをわりと重視します。それでOKとなったわけですが、今度はメッシを預かるカテゴリーのコーチが「どうやって育てようか」と悩み始めた。

――才能は凄いけど体が小さかった。

風間　そしたら、悩んでいるまもなくカテゴリーを一気に飛び越していった（笑）。

――悩むまでもなかったというオチですか。

2003年、メッシと家族の1枚　©Getty Images

滑るように走る。だからボールが離れない

――ドリブルの走り方も独特とのことでしたが。

風間　陸上競技とは違いますね。

――「足の裏があまり見えていない」というところですね。

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