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藤井聡太「王将戦の各局、非常に難しかった」、羽生善治「将棋は奥深いもの」と語るが…“2人の高み”を同世代・若手棋士はどう感じたか
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NumberWeb編集部Sports Graphic Number Web
photograph by日本将棋連盟
posted2023/02/09 17:14
王将戦第4局、対局開始時の藤井聡太王将と羽生善治九段
「藤井さんは高性能のパソコンみたい」(三枚堂)
「ただ、対局していないときは普通の青年ですよ。ABEMAトーナメントで同じ『チーム藤井』の伊藤匠君が菅井(竜也)さんと戦った試合を藤井さんと見てました。そこで『観る将』のように盛り上がったんです」(高見)
それぞれが盤上・盤外の藤井聡太評を大いに語っていたが、やはり3人は藤井将棋の凄みを感じ取っていた。特に八代は藤井が三段の頃に「初めて指した」そうで、その時点で才能のきらめきを感じ取っていたそうだ。
それゆえ、棋士の食事場だった「みろく庵」で高見と語り合ったとき、高見が「藤井君もすごいけど、同世代についていくのが大事」と話すと、八代はこのように返したという。
「違うだろ。藤井君を意識しないと」
その後、藤井はデビューから無敗のまま新記録となる29連勝を果たしたのだった。
17歳最年少棋士が語った“王者・藤井聡太の印象”
<名言4>
藤井先生は今も強くなっている。でも、ちょっとでもいいから僕の方が強くなるスピードを速くしていかないといけないなと。
(藤本渚/Number1060号 2022年10月6日発売)
◇解説◇
藤井聡太がデビューを飾って6年余が経ち、新たな世代が将棋界に台頭している。例えば同学年にあたる伊藤匠五段は2月7日に行われた順位戦C級1組で全勝をキープし、来期B級2組への昇格も見えてきた。そんな彼らのさらに年下、現在最年少棋士の17歳・藤本四段にも注目が集まりつつある。
昨年10月に四段昇段した藤本は2月6日に行われた竜王戦6組、神谷広志八段戦で“会場間違え”で不戦敗となり、思わぬ注目が集まった。しかしそこまでにデビューから6連勝を飾っているのも事実だ。
憧れの棋士として羽生の名前を挙げる藤本は、四段昇段直後のNumberのインタビューで「怖いです」「不安です」と何度も口にしていた。プロの世界という荒波に恐怖を抱えていたのは事実だろう。それと同時に――藤井聡太について質問した時の答えが冒頭の言葉だ。
学年で3つ上の王者に対して、大きな畏敬の念を払いつつも「じゃないと一生追いつけないので」と、棋士としての誇りを少しずつ身につけようとしている。
「その分、充実感もあったと思っています」
迎えた王将戦第4局。羽生は前日検分で藤井将棋について「やはり藤井さんは棋譜で見ているだけではなく、実際に対局してみても毎回、内容の高い将棋を指されるなという印象を持っていますね。今まで後手番が2局ありましたけど、自分の方がはっきり有利だったという瞬間は多分1回もなかったと思います」と話した。
一方で藤井は前夜祭で「ここまでの3局は持ち時間8時間ということもあり、一手一手非常に難しかったんですけども、その分、充実感もあったと思っています」と語っており、対局で過ごす時間をまた自らの糧としているようだ。
さらなる高みを目指す藤井聡太に対して、今も高みを見続ける羽生。戦型は角換わりで進行する中で、どのように2日制の戦いに挑んでいくのか。
記事内で紹介できなかった写真が多数ございます。こちらよりぜひご覧ください。