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「TAKEユニの日本人ファンが増えた気が」久保建英MOMも“代えが利かない状態”を現地撮影…ソシエダは狂う歯車を直せるか
text by
中島大介Daisuke Nakashima
photograph byDaisuke Nakashima
posted2023/02/09 11:01
ノーゴールに終わったのは痛かった。ただソシエダの攻撃は現状、久保建英によって司られている
ビッグクラブではないソシエダが、リーガに加え、EL、国王杯と戦ってきたことで、ギリギリのバランスで回ってきた歯車が摩耗し、空回りし始めているかのように、ピッチ上では、味方同士でボールを奪い合うようなシーンさえ何度かあった。
そして国王杯も含めた直近3試合で無得点となっており、チームの勢いに陰りが見え始めている。
久保の負担は――代えの利かない存在の今――攻守両面にわたって大きくなっている。それでもチームに勝利を手繰り寄せるゴールを久保には期待したい。
美食の町で味わった「シードラ」と日本人ファンの話
話はサッカーから離れて、この取材に先立ち、サン・セバスティアンから車で15分ほどのウスルビルという町を訪れた。
今バスクでは、シードラが旬を迎えている。シードラとは、リンゴを発酵させたお酒で、日本ではシードルと呼ばれるが、バスクシードラは、より酸味が強く、かなりの微炭酸が特徴的。たとえるとボジョレーヌーボーの解禁を祝うように、1月の第2週を過ぎたあたりに、初飲みが行われる。
初物シードラを目指して、レストラン併設の醸造所を目指した。
シーズンオフには、営業していないお店も多く、まさに旬。
町の中心の広場には、教会とともにバスクの伝統スポーツ“ペロタ”の専用競技場があった。そこでは、街では見かけなくなった路地裏サッカーを目にすることができた。
また広場を囲むようにあるバルでは、それを見守りながらワイン片手に昼前の一杯を楽しむ、人々の穏やかな生活を感じる。
レストランに着くと、シーズンの始まりを待っていた多くの地元客が訪れていた。理解をすることはできないが、バスク語がちらほらと聞こえてくる。
料理は、シードラ飲み放題のコースが一般的。まずシードラで煮詰めたチョリソを一口頬張る。そして食事スペース隣にある、ひんやりとした蔵に向かうと、2メートル超の巨大な樽がたくさん待ち構えていた。
そう、この季節、ここでは樽から直接注がれる、フレッシュなシードラが飲めるのだ。係の方が栓をひねると勢いよくシードラが飛び出してくる。
お客が列を作り、受け取ったコップの縁で受けるように注いでいく姿がなんとも珍しい。
樽は20個以上ある。リンゴ模様の刈り込みを入れた係員さんに話を聞くと、それぞれリンゴの種類が違うという。また同じ種類でも樽によって味わいが異なってくる。
通路には排水溝があり、気に入らないものはそのまま捨ててしまうのもありなのだとか。そしてテーブルに戻ると、バカラオ(鱈)のトルティージャが待っている。火入れは完璧だが、塩鱈の塩気を抜き過ぎたか、ややパンチにかける。
もう一度、蔵に向かい、改めてシードラの味比べ。テーブルに戻ると、鱈のグリルが運ばれてきた。添えられたピーマンとネギの蒸し焼きが彩りと甘さを加える。
さらにシードラを味わい席に戻ると、メイン料理、バスク牛のチュレトンが運ばれてきた。すでにお腹ははち切れそうだが、デザートには、山盛りの胡桃、そしてイリヤサバルチーズにリンゴの寒天のようなものを乗せて食べると、なぜか止まらない。
徐々にソシエダのホームスタジアムに「TAKE」ユニホームを着て応援に訪れた日本人ファンの姿も多くなってきたのを感じる。市内にもたくさんの美味しいレストランがある都市だが、郊外にちょっと出てみると、さらに特徴的な料理や文化に出会えるかもしれない。
記事内で紹介できなかった写真が多数ございます。こちらよりぜひご覧ください。