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Jをめぐる冒険BACK NUMBER
なぜサガン鳥栖は“主力がほぼ残留”したのか…「選手が監督を品定めする」と語る川井健太監督41歳のチャレンジ「本気で一番上を味わいたい」
posted2023/02/08 11:03
text by
飯尾篤史Atsushi Iio
photograph by
J.LEAGUE
――先ほど4月の京都戦(○3-0)の話をしましたが、それ以外にもサンフレッチェ広島との開幕戦(△0-0)や3月の浦和レッズ戦(○1-0)、4月の北海道コンサドーレ札幌戦(○5-0)、5月の鹿島アントラーズ戦(△4-4)など印象に残っているゲームはたくさんあります。その中でも8月の川崎フロンターレ戦(●0-4)はすごく示唆に富んでいたと思うんですね。
川井 ああ、はい。
――あの試合はかなりのチャレンジをされたと思いますが、あの川崎戦で川井監督は何が見たかったのか? どんな仮説を立てて、どんなことが検証できたのでしょうか?
川井 前年のチャンピオンチームとアウェイでの対戦でしたけれど、間違いなく勝てると思って乗り込みました。ただ、最初の10分ぐらいかな、これはちょっと難しいなと。もちろん、その中でも勝機を探っていましたが、前回対戦した川崎とはちょっと違うなと。あの頃、川崎は首位争いをしていて、タイトルを意識し始めていたと思うんです。一方、僕らはタイトルがちょっと難しくなっていた。5月に川崎と対戦したときは引き分けで(△0-0)、こちらも非常にいいパフォーマンスを出せて、勝ってもおかしくない試合ができたんですけど、タイトルを意識したときの力の差はものすごくあるなと感じました。
――試合後に「何かが懸かったときに彼らは本当に強いと思った」とおっしゃったのは、まさにその差。
川井 そうです。だから、我々もタイトル取らなきゃいけないな、と思いましたね。
「ストロングを出し続けるよ」という決断をした
――「対策を練ってやり合うというのももちろんありましたが、いま我々は川崎さんを見習いたいとも思っている。ここでうまくかわしたとしても何も残らない可能性もあった」という試合後の言葉を聞くと、川崎を分析して、自分たちの良さをカスタマイズすればいい勝負はできる。でも、その先に行くためにはやってきたことをぶつける、という考えだったのでしょうか?
川井 もう、その通りです。あの川崎戦は1試合に過ぎないですけど、1年スパンであったり、その先まで考えたとき、ここで戦い方を180度変えることが何を意味するのか、選手たちも分かる。あそこは究極の決断が必要なところで、僕は「ストロングを出し続けるよ」という決断をした。もちろん、それによってウイークが大きくなるのは分かっていて、結果、敗れました。でも、分かったことがある。じゃあ、次に向かってそれを修正しましょうと。それで何が悪いのか、という感じです。そうやって上に行きたいと思っています。
――なるほど。
川井 これはもう、監督の考え方ですよね。もちろん、違う方法を選んで勝って次に進む。それをアップデートして元に戻せる方法もあるかもしれませんけど、僕は今、その方法をやりたいかというと、やりたくない。そういったことを知れた1試合でしたね。
「横綱相撲」っていい言葉だなと思っていて
――「川崎さんを見習いたい」というのは、どんな相手に対してもスタイルを変えず、横綱相撲での勝利を狙うことでしょうか?