川井　そうなんですかね。強化がいろいろ頑張ってくれたのが大前提で、少しは勝ったかもしれないですね（笑）。予想よりも多く残ってくれました。「こんなに残ってくれるの？」という感じでしたね。

岩崎、堀米らは今季も鳥栖の一員として戦う　©Masashi Hara/Getty Images

――先ほど、去年はベースを作るうえで、川井監督自身が練習メニューを考えてコーチに授けていたけれど、今年は分業制の色を強めたと。それによって監督としての時間に余裕ができると思いますが、それをどういう作業に充てたいですか？

川井　これはシーズン中のほうが実感すると思うんですけれども、間違いなく余裕が生まれますよね。だから、まずは選手をじっくり観察したいですし、やりたいことのアイデアは今の時点でもすごく浮かんできます。トレーニングメニューもそうだし、この選手をここに置いても面白いかなとか、チームが勝つために、チームが成長するために、新たにやるべきことが見つけられるんじゃないかなと思っています。

フットボールの価値を上げるためにプライベートを

――アイデアということでは、曺貴裁監督のようにシーズンが終わったら必ずヨーロッパに行って、何試合も見て、インスピレーションやアイデアを得てくる監督もいます。川井監督の場合、アイデアの源はどこですか？

川井　僕もヨーロッパのサッカーは観ます。今オフも、ヨーロッパに行きたいな、ワールドカップも観たいな、と思っていたんですけど、ちょっと難しかったので、バスケの試合を観に行きました。もちろん、本を読んだり、映画を観たりもして。僕の良くないところなんですけど、フットボール以外から刺激を得ようとすることが多いかもしれないです。

――いや、それは良くないところではなくて。先ほどの格闘技の映像の話もそうですが、サッカーをサッカーだけで完結させないのは、川井監督の武器というか、魅力だと思います。先日の囲み取材でも、「選手にはもっとプライベートを充実させてほしい。自分もそういうタイプだから」と。そのプライベートの時間で違うスポーツを観たり、音楽を聴いたり、映画を観たりしたことが、サッカーに還元されるというような。

川井　その通りですね。だから選手たちにもプライベートを充実させてほしいと思っていて。家族としっかり過ごす。遊びに行くのも全然問題ない。いい時間を過ごせたな、こういう時間をまた過ごしたいな。じゃあ、何するのか、「しっかり仕事をしなきゃ」と。自分の仕事であるフットボールの価値を上げるためにプライベートを充実させる。そういう考えです。フットボールの中だけで成長して刺激をもらい続けるというのは、日本という島国の中ではおそらく難しいと思います。フットボール界よりも先を行っているものがあるので、選手たちにはそういうものを探して、刺激をもらってほしいなと思っていますね。

――ちなみに、バスケではどんな刺激を得たんですか？

川井　エンターテインメント性ですよね。試合が始まる前から盛り上がっていて、ゲームも本当にスピーディで。フットボール界でよく言う「攻守がない」というのは、バスケでは当たり前の状態で。そもそも何秒以内とか、これって観客の立場としてはすごく嬉しかったし、アウトボールのときに時間が止まるのも嬉しい。フットボールよりも先を行っているなって。職業的なところでは、監督はどんな立ち振る舞いをしているのかなとか。ラスト1分ぐらいで作戦を授けていて、これはセットプレーかなとか、いろいろ考えました。あと、なんでバスケって2日連続で試合ができるんだろうとか。あんなにジャンプして、動き回っているのに。僕らは筋肉を使いすぎるなと言うけど、それはもしかしたら嘘なのかなとか、見方がいろいろ変わるなと思いましたね。

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