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なぜサガン鳥栖は“主力がほぼ残留”したのか…「選手が監督を品定めする」と語る川井健太監督41歳のチャレンジ「本気で一番上を味わいたい」 

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飯尾篤史

飯尾篤史Atsushi Iio

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photograph byJ.LEAGUE

posted2023/02/08 11:03

なぜサガン鳥栖は“主力がほぼ残留”したのか…「選手が監督を品定めする」と語る川井健太監督41歳のチャレンジ「本気で一番上を味わいたい」<Number Web> photograph by J.LEAGUE

2022シーズンの川井健太監督。就任2シーズン目の今季、サガン鳥栖をどのような方向性に導くか

川井 そうですね。「横綱相撲」っていい言葉だなと思っていて。僕のイメージですけど、1回、受けて立つと。どんな技でも来いと。で、全部返すみたいな。動じない。横綱がいきなり猫だましから入るかというと、絶対にない。でも、横綱相撲ができるには圧倒的な力が必要なんですよね。力がないから、二の手、三の手からいくというのは、僕はあまり好きではないので。

――近い将来のサガン鳥栖の優勝を見据えているからこそ、ですね。

川井 J1にいる以上、J1リーグ、ルヴァンカップ、天皇杯と3大タイトルを狙う権利は常にある。その権利を自分から放棄するようなことは絶対にしたくない。何よりファン・サポーターの人たちが一番喜ぶのは、絶対に優勝なので。難しいかもしれないですが、常に意識していきたいです。

「1年が終わった。さあ次の1年」ではなく

――残留が決まったあとのラスト3試合も、理想を目指すうえでの実験的な要素、今季に向けたチャレンジの要素が強かったのではないでしょうか? 言語化が難しいんですが、なるべく後ろの選手だけでボールを運び、前に人数を掛けたい、という狙いを感じました。9月の中断期間に、攻撃陣、守備陣と分かれて技術のクオリティを上げるようなトレーニングをかなりやった、とも聞きました。

川井 今の言葉は、正解です。攻守ともに前に人数を残して、どうにかできないかとやっていました。コーチ陣もいろいろな意見があったと思いますが、それにチャレンジして、できるようになりたかったし、やっぱり難しいと知るだけでも価値があるなと。小林とも話したんですけれど、「1年が終わりました。さあ、次の1年」じゃなくて、そこをシームレスにしたい感覚があった。今年は去年いた選手が大幅にいなくなったわけではなく、去年のベースに肉付けできる選手が来てくれた。だから、あれは確かに今季を見据えての実験的なものでした。

――プレシーズンのテストマッチを、すでに去年から行っていたような。

川井 もちろん、捨てているわけではなく、その中でも勝ちを求めながらやっています。でも、やっぱり何かに挑戦しないと、最短でタイトルには近づけない。そういう意味では、かなりチャレンジしましたね。

「こんなに残ってくれるの?」という感じでした

――今おっしゃったように、鳥栖としては珍しく、選手の入れ替わりが少なかった。大金を積めたわけではないと思うので、ここに留まってサッカーをやりたい、と思った選手が多かったということですよね。だとすると、強化部と監督の勝利ですね。

川井 そこは、強化が本当によくやってくれたと思います。監督の立場としては、強化に「すべて一任します」と言っていました。だから、「この選手を残してくれ」といったリクエストを一切出していないです。

――そうなんですね。

川井 そこは僕も勝負だと思っているんですよ。シーズン中はいわば、僕が選手を品定めして、使うか使わないかを決める。でも、シーズンが終わったら今度は選手がどの監督がいいのか品定めする。僕自身も自分を安売りしたくはないので、僕のことをダメだと思って出ていくなら仕方がない。そこは僕にとって勝負なんですよね。

――だとすると、やはり勝ったんじゃないですか(笑)。

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