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三笘薫はなぜプレミアで無双できる? ブライトンと智将デゼルビに学ぶ“覚醒ミトマの生かし方”〈東大監督+気鋭の解説者・林陵平が熱弁〉
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NumberWeb編集部Sports Graphic Number Web
photograph byJacques Feeney/Offside/Getty Images
posted2023/02/03 17:01
リバプール戦の三笘薫。プレミアを席巻するアタッカーが躍動している理由を林陵平氏に解説してもらった
「攻撃的な選手は感情の起伏が激しいタイプが多い。もちろん、それがいいように働くシーンもあるんですけど、三笘の場合は常に冷静ですよね。淡々と仕事をこなすメンタリティがすごくいい。勝っている時でも負けている時でもブレがないのは、監督視点で考えても信頼を置きやすいタイプですね。振る舞いがいいです」
振る舞い? 具体的にどういうことか。
「わかりやすいのは、顔つきですよ。表情やジェスチャーを見ればそのプレイヤーの精神状態はわかる。三笘はポーカーフェイスというか、相手からすれば何を考えているかわからないから怖いと思う。特にプレミアリーグとか世界のトップレベルは、わざと削ってイラつかせたりする駆け引きもある中で、(相手に)削られてもあまり感情的にならない。対峙したDFたちはきっと『こいつ変わらねえな』とか『厄介だな』という印象を抱いていると思いますよ」
三笘が生きる「ブライトンのメカニズム」
こういった活躍の背景には、恵まれた環境に身を置いているという点を見逃してはならない。林氏が「試合を見て狙いがわかる。シンプルに今、一番面白い」と語るブライトンのサッカーにも目を向ける必要がある。
ブライトンは今シーズン途中に、チームを上昇気流に乗せたポッター監督がコーチ陣と共にチェルシーへ電撃移籍。その後釜としてやってきたのが現在指揮を執る“イタリアのペップ”とも評される、デゼルビ監督だ。
「ウイングの選手(攻撃の選手)が常に前を向いてボールを受けられることは、チームコンセプトとしてすごく重要。三笘や(右サイドの)マーチが生き生きとプレーできるのは、ブライトンのサッカーがしっかりと設計されている、デザインされているという何よりの証拠です。
指揮官のデゼルビは、もともとビルドアップから攻撃の崩し方をしっかりとデザインする監督でした。就任当初は以前のサッカーを踏襲して3バックを敷いていましたが、サッスオーロ(セリエA/2018~2021)時代から4バックが主戦システムで、ずっと4-3-3や4-2-3-1を重用してましたね。だから、ウイングに求める仕事は確立してきたはずで、三笘に与えるタスクにも余計なものがなく、明確。どんな仕事でもそうですが、一気にたくさんの仕事を任されたら、何から手をつけるか一瞬考えますよね。サッカーは90分という限られた中で表現するスポーツ。その中でデゼルビは効率よく選手の特徴を引き出せる監督なのだと思います」
「三笘はストレスなく“前を向けている”」
デゼルビ体制以後、チームの得点王だったベルギー代表FWトロサールは起用法に不満を持ち、この冬に冨安健洋が所属する首位アーセナルへ移籍した。キープレイヤーの放出という懸念を振り払ったのが〈救世主・ミトマの覚醒〉だった。