熱狂とカオス!魅惑の南米直送便BACK NUMBER
鎌田大地42億円、冨安健洋35億円だけどエムバペ252億円、ビニシウス168億円!“市場価格差の根本”を育成システムから考える
text by
沢田啓明Hiroaki Sawada
photograph byKiichi Matsumoto/JMPA
posted2023/01/14 11:02
カタールW杯スペイン戦のスターティングメンバー。鎌田大地や久保建英ら“市場価値10億円オーバー”の選手は増えてきたが……。
98年:Jアカデミー0人(0%)、高校8人(36%)、大学13人(60%)、その他1人
02年:Jアカデミー5人(22%)、高校13人(57%)、大学4人(18%)、その他1人
06年:Jアカデミー5人(22%)、高校15人(57%)、大学2人(9%)、その他1人
10年:Jアカデミー5人(22%)、高校15人(57%)、大学2人(9%)、その他1人
14年:Jアカデミー9人(39%)、高校11人(48%)、大学2人(9%)、その他1人
18年:Jアカデミー10人(43%)、高校10人(43%)、大学2人(9%)、その他1人
22年:Jアカデミー11人(22%)、高校5人(19%)、大学9人(35%)、その他1人
注:「その他」は、呂比須ワグナー、三都主アレサンドロ、田中マルクス闘莉王、久保建英のように外国のプロクラブのアカデミーで、あるいは香川真司(シント・トロイデン)のようにアマチュアクラブで育った場合。
年を追ってJクラブのアカデミー育ちの選手が増えており、カタール大会では初めて高校の部活動出身の選手を上回った。その反面、アカデミーや高体連経由で大学の体育会で育った選手が増えており、高校と大学を合わせると、これまでと同様、半数を超える。
日本と欧州、南米では選手を取り巻く社会環境がかなり異なる。
伝統的に、日本のトップ選手は高校や大学のチームで育成されてきた。また、日本は学歴社会であり、プロになれなかったりプロで活躍できなかった場合を考えると、学校のチームでプレーするメリットは大きい。
理不尽な旧来の部活スタイルから“自主性”へ
しかし、世界の強豪国との実力差を大急ぎで縮め、2050年までにW杯で優勝することを本気で目指すのであれば――日本的な大前提があるとしても、指導者や選手の家族は以下のような指導を念頭に置く必要があるのではないか。
1)選手の自主性を尊重し、楽しく練習をさせる。教え過ぎない。選手を叱ったり怒鳴ったりして萎縮させない。
これはすべての育成年代において言えることだろう。
元日本代表FW大久保嘉人は、小学校3年のときにスポーツ少年団に入ってフットボールを始めた。国見中を経て、猛練習で知られる国見高校へ進んだ。
当時を振り返って「部活は理不尽なことだらけ。でも、それに耐えたことがプロになって生きた」と語ったこともあった。しかし、引退して4児の父となった今、「サッカーに関して、子供にはあまり指図しないようにしている」とメディアで語っている。
「僕が小さい頃は、怒られながら指導されるのが当たり前だった。でも、あれはやる気をなくす。『ここは良かったが、こう改善した方がいい』と言ってもらえると、『もっと頑張ろう』という気になる。褒めながら育てる方がいいと思う」
またスペインとドイツでプレーした経験を踏まえ、「海外の選手は皆、サッカーを楽しみ、日々、『どうすればもっとうまくなれるのか』と考えながら練習している。そういう環境から、世界のトップ選手が出てくる」と語る。