“ユース教授”のサッカージャーナルBACK NUMBER
「何かが足りない」岡山学芸館この1年で何が変わった? 選手権優勝に繋がった名将の教え「止めて蹴る」ではなく「止めて“強く”蹴る」
text by
安藤隆人Takahito Ando
photograph byKiichi Matsumoto
posted2023/01/10 11:01
東山との決勝戦で2ゴールを挙げた岡山学芸館MF木村匡吾(3年)。岡山県勢初となる日本一に輝いた
5バックの前に中盤4枚を並べて強固なブロックを作ってきた佐野日大との準々決勝では、最終ラインでゆっくりとボールを回しながら、相手の守備のズレが生じることを待った。そして左サイドハーフの田邉望(2年)、1トップの今井拓人(3年)、トップ下の田口裕真(2年)、右サイドハーフの岡本温叶(3年)の前線の4枚が相手のギャップに入った瞬間に、山田蒼(3年)と木村匡吾(3年)のダブルボランチだけではなく、4バックのどこからでも鋭い縦パスがズバズバと入った。だからこそ、優勝候補の履正社を苦しめた強力な佐野日大のブロックを前半でこじ開け、4-0の完勝を飾ることができた。
3-3の乱打戦となった神村学園との準決勝でも高校No.1ストライカーの福田師王(3年)に何度も前線で起点を作られ、何度も両サイドアタッカーにエリア内への侵入を許したが、深い位置でボールを奪い、そこからミドルパスを正確に通すことで一気にカウンターを仕掛けることができた。この試合で何度も縦への仕掛けを見せ、先制点をマークした田口裕はこう振り返る。
「福田選手を止めるためにボランチの一方がプレスバックに行かないといけない状態で、これまでの僕らだったら中盤が間延びをしてしまっていたかもしれない。でも残ったボランチや僕のところに後ろから強いパスが来るので、僕らアタッカー陣はそこまで下がらなくてもボールを受けられるんです」
決勝戦でも光った鋭いカウンター
そして、決勝戦ではJ1セレッソ大阪内定のMF阪田澪哉(3年)を始めとする推進力あるアタッカー陣や運動量と展開力に秀でたダブルボランチを擁する東山に対しても、山田と木村の2人がしっかりと守備に貢献しながら、奪ったボールを素早く田口裕や今井、両ワイドに繋いで鋭いカウンターを仕掛けた。
サイドに展開して突破すると、クロスに合わせるべく複数人の選手がゴール前に雪崩れ込む。その一方で相手の帰陣は素早く、一度ボール保持に切り替えて、守備の歪みを狙う。まさにこれまでの岡山学芸館らしさと、平の大事にしてきた“ベース”が見事に融合していた。