“ユース教授”のサッカージャーナルBACK NUMBER
「何かが足りない」岡山学芸館この1年で何が変わった? 選手権優勝に繋がった名将の教え「止めて蹴る」ではなく「止めて“強く”蹴る」
text by
安藤隆人Takahito Ando
photograph byKiichi Matsumoto
posted2023/01/10 11:01
東山との決勝戦で2ゴールを挙げた岡山学芸館MF木村匡吾(3年)。岡山県勢初となる日本一に輝いた
「最後に勝ち切ることができなかったのは何かが足りないから」
指導者としての壁にぶつかっていた高原監督は、東海大福岡を離れることになった平にチームに加わってもらうことを打診。当初は総監督にという話だったが、平は「このチームはあくまで高原監督が作り上げたもの。そこにいきなり上から入るのはよくない。一緒に強くさせられるようにこの立場にしました」とゼネラルアドバイザーという立場をとった。
豊富な経験値に基づいた選手の特性や性格を見抜く目、そして勝負の感覚はすぐにチームに相乗効果を生む。しかし、何より岡山学芸館のサッカーに変化をもたらしたのが、平が東海大五時代から徹底してきたパススピードの変化である。
「トラップしてからでも、ダイレクトでも、インサイドキックでしっかりと遠くまで速いスピードで蹴れないのは選択肢を狭めていることになる。どんなボールの状態でも近くの味方にはもちろん、距離がある味方に対しても自信を持ってパスが出せるようにならないといけない」(平)
「止めて蹴る」はよく言われるところだが、「止めて強く蹴る」「ダイレクトで強く蹴る」は平が指導の大事なベースにしてきたこと。対面パスやトライアングルパスの距離を広げながら徹底して磨く練習は、これまでの取材で何度も見てきた。
“変化”を感じ取った夏のインターハイ
筆者が岡山学芸館の“変化”に気づいたのは、今年度のインターハイである。明らかに1人1人のパススピードが速くなり、ボールを奪った瞬間に選手の顔が上がっていて気持ちいいぐらいにスパンと中距離のパスが通る。それによって以前から得意としてきた「速攻と遅攻の使い分け」を相手によって効果的に切り替えられるようになった。
そして、そのパスのスピードと質、強度がさらに磨きがかかっていることを選手権の舞台で証明した。